政府は国と自治体合わせて約330万人いる公務員に「65歳完全定年制」を導入する方針を打ち出した。年末までに国家公務員法と地方公務員法の改正案をまとめ、来年(2018年)1月からの通常国会で成立、翌2019年から公務員の定年を段階的に延長し、年金が65歳支給開始となる2025年に「65歳完全定年制」を敷く。
現在57歳の国家公務員(ノンキャリア職員)の平均年収は約804万円で、定年延長がなければ2020年に829万円で60歳の定年を迎える。ところが、定年延長で65歳まで勤め上げればその給与水準をほぼ維持したまま、ざっと4000万円ほどの生涯賃金が上積みされる計算になるのだ。
雇用延長の待遇には、現在でも大きな官民格差がある。
改正高年齢者雇用安定法の施行(2013年4月)で、民間企業は希望する社員に65歳まで雇用を延長することが義務化された。とはいえ、現在65歳定年制を実施している企業はわずか16%にすぎない。ほとんどの民間サラリーマンは60歳で定年を迎えた後、大幅に賃金が下がる嘱託など再雇用で働かされている。食品メーカーで定年後に再雇用された64歳の元管理職・Aさんが語る。
「嘱託で65歳まで働くことはできるが、1年ごとの契約更新で毎年本給が下がっていく仕組みです。今は週5日フルタイム勤務で月の手取りは約25万円。ボーナスもなく、収入は現役時代の半分以下です。元部下にアゴで使われながら、年金を満額もらえる65歳まで耐える日々です」