北朝鮮による核の脅威が増す中、これまで日本では“タブー視”されてきた議論が米国で噴出している。「日本核武装論」である。仮に製造能力だけで考えると、元航空幕僚長の田母神俊雄氏は「日本政府が決断すれば1年ほどで核保有できる」と分析し、その場合の防衛費の増額は年間1.5兆円ほどになると試算している。
一方で、「持たない」という選択を続けた場合でもコストは膨らむ。北朝鮮や中国の脅威に対抗するため日本の防衛予算は年々拡大している。防衛省が8月末に提出した2018年度予算案は前年比2.5%増の5兆2551億円。6年連続のアップとなり、過去最大を記録した。
中でも“カネ食い虫”となっているのが、弾道ミサイルに対処する防衛関連費用だ。海上自衛隊のイージス艦に搭載される改良型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」の購入費が472億円。弾道ミサイルを地上で迎撃する航空自衛隊の改良型地対空誘導弾「PAC3MSE」の購入費が205億円。地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」は、1基約800億円といわれる。日本全土をカバーするには2基の導入が必要なため、最低1600億円の負担となる。
しかもそうしたミサイル防衛費は将来にわたって膨らみ続けていく可能性がある。軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏が解説する。
「韓国に配備されているTHAAD(高高度防衛ミサイル)の導入は日本では見送られましたが、今後、北朝鮮の核・ミサイル脅威がますます高まり、ミサイル迎撃に対する『安心』を求める国民の声がもっと強くなれば、日本政府も再検討するでしょう。このTHAAD配備には7500億円という巨額予算が必要になる。米国との交渉によってはさらに高額になる可能性がありますし、用地買収や訓練経費まで含めると、運用できるまでに1兆円ぐらいのコストが掛かるかもしれません」