政府は国と自治体合わせて約330万人いる公務員に「65歳完全定年制」を導入する方針を打ち出した。安倍政権下での役人天国の野放し振りが目につく。公務員の共済年金は「役得年金」と呼ばれる。厚生年金が基礎年金と報酬比例部分の“2階建て”なのに対し、公務員の年金には「職域加算」という3階部分があったからだ。
その共済年金は2015年に厚生年金と統合され、役得は消滅すると思われていた。しかし、統合にあたって役人の年金積立金を財務省が独自に運用し、「年金払い退職給付」という“新3階”を作ったのだ。経済ジャーナリストの荻原博子氏が指摘する。
「公務員年金は厚生年金に比べて保険料が低く、給付は多かった。しかし、公務員の定数削減の時代にそんな制度が続けられるはずがない。ついに支えきれなくなって厚生年金と一元化した。いわば破綻が見えてきたから民間サラリーマンに尻ぬぐいさせたわけです。それなら蓄えた年金積立金は全額厚生年金に渡すのが筋なのに、積立金の一部を温存して新たな3階部分の役得年金をつくったのです」
やりたい放題ではないか。それだけではなかった。今年1月の年金改革により、それまで対象外だった専業主婦と公務員が「確定拠出年金(個人型)」に加入できることになった。これは掛け金を自分で負担する個人年金だが、節税効果が非常に高い。
「収入がほとんどない専業主婦が確定拠出年金を掛けても節税のメリットは期待できない。狙いは最初から公務員に門戸を開くことでした。平均年収が高い公務員なら大きな節税ができます。この改正で公務員の年金は3階部分の『年金払い退職給付』の上に『確定拠出年金』を重ねた事実上4階建ての手厚い仕組みになったのです」(荻原氏)