ライフ

【著者に訊け】21万部ヒット『定年後』執筆の背景

『定年後』が21万部ヒットの楠木新さん

【著者に訊け】楠木新さん/『定年後』/中公新書/842円

【本の内容】
 著者の計算によれば、60才からの自由時間は実に8万時間。それは20才から40年間勤めた総実労働時間より多い。つまりサラリーマンであれば、いつか誰もが迎える「定年」。その後をどう充実させるかは、その人自身にとってはもちろん、家族にとっても、とても重要なことなのだ。本書には、著者が長年取材してきた定年後の人たちのエピソードを多数収録。人生後半戦を「いい顔」で過ごすための方法が浮かび上がる。

 第二の人生を、どうやってイキイキ過ごすか。具体的な選択肢を示すこの本は、2017年4月に刊行されると、著者も驚く21万部のベストセラーになった。

「人生100年時代といわれ、終わりが後ろに延びたことの影響でしょうか。この本は、おもに男性の『定年後』に絞って書いていますが、女性読者からの関心の高さにも驚きました」(楠木さん、以下「」内同)

 長い老後への漠然とした不安を感じている人がそれほど多いということだろう。内館牧子『終わった人』、渡辺淳一『孤舟』といった定年後を描いた小説が話題になり、年金や老後の貯金、健康問題を取り上げた週刊誌の記事も目立つ。

「ベストセラー小説と、定年後を取り上げた一般書籍や雑誌記事にはズレがあるんです。小説以外で、人や社会とのつながり、心の問題を書いている本はほとんどない。だから、この本は、ポイントをそこに置きました。ぼく自身、生命保険会社に長いこと勤めて、お金の大切さもわかっているつもりですが、読者の本当の関心は、むしろお金以外のところにあると思っていましたから」

 楠木さん自身は、会社員生活のかたわら50代で執筆活動を始めた。47才のとき、うつ状態で休職したことをきっかけに、会社員以外の居場所を探したという。2年前に60才を迎えると、再就職や雇用延長はせずに退職、自身も一人の定年退職者としてこの本を書いた。

 豊富な取材にもとづくさまざまな人の体験談と同時に、楠木さん自身の経験も織り込まれている。「亭主元気で留守がいい」の章では、奥さんから、執筆は自宅ではなく「事務所でしてほしい」と言われて絶句したことも書かれ、この本を身近な、魅力あるものにしている。

「元気で動けるのはあと何年か。定年後は、逆算型の生き方をこの本では提案していますが、調子よく生きてるときはなかなかできないんですよね。自分の病気や家族の問題、会社のリストラですとか、外から見たら挫折体験と思える経験をして初めて、人生は有限だと思って動き出す人が多い。マイナスが、長い目で見るとチャンスになることもあるんです」

■取材・文/佐久間文子

※女性セブン2017年9月28日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

遺体には電気ショックによる骨折、擦り傷などもみられた(Instagramより現在は削除済み)
《ロシア勾留中に死亡》「脳や眼球が摘出されていた」「電気ショックの火傷も…」行方不明のウクライナ女性記者(27)、返還された遺体に“激しい拷問の痕”
NEWSポストセブン
当時のスイカ頭とテンテン(c)「幽幻道士&来来!キョンシーズ コンプリートBDーBOX」発売:アット エンタテインメント
《“テンテン”のイメージが強すぎて…》キョンシー映画『幽幻道士』で一世風靡した天才子役の苦悩、女優復帰に立ちはだかった“かつての自分”と決別した理由「テンテン改名に未練はありません」
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
《ヤクザの“ドン”の葬儀》六代目山口組・司忍組長や「分裂抗争キーマン」ら大物ヤクザが稲川会・清田総裁の弔問に…「暴対法下の組葬のリアル」
NEWSポストセブン
1970~1990年代にかけてワイドショーで活躍した東海林さんは、御年90歳
《主人じゃなかったら“リポーターの東海林のり子”はいなかった》7年前に看取った夫「定年後に患ったアルコール依存症の闘病生活」子どものお弁当作りや家事を支えてくれて
NEWSポストセブン
テンテン(c)「幽幻道士&来来!キョンシーズ コンプリートBDーBOX」発売:アット エンタテインメント
《キョンシーブーム『幽幻道士』美少女子役テンテンの現在》7歳で挑んだ「チビクロとのキスシーン」の本音、キョンシーの“棺”が寝床だった過酷撮影
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚することがわかった
女優・趣里の結婚相手は“結婚詐欺疑惑”BE:FIRST三山凌輝、父の水谷豊が娘に求める「恋愛のかたち」
NEWSポストセブン
タレントで医師の西川史子。SNSは1年3ヶ月間更新されていない(写真は2009年)
《脳出血で活動休止中・西川史子の現在》昨年末に「1億円マンション売却」、勤務先クリニックは休職、SNS投稿はストップ…復帰を目指して万全の体制でリハビリ
NEWSポストセブン
中川翔子インスタグラム@shoko55mmtsより。4月に行われた「フレンズ・オブ・ディズニー・コンサート2025」には10周年を皆勤賞で参加し、ラプンツェルの『自由への扉』など歌った。
【速報・中川翔子が独立&妊娠発表】 “レベル40”のバースデーライブ直前で発表となった理由
NEWSポストセブン
奈良公園で盗撮したのではないかと問題視されている写真(左)と、盗撮トラブルで“写真撮影禁止”を決断したある有名神社(左・SNSより、右・公式SNSより)
《観光地で相次ぐ“盗撮”問題》奈良・シカの次は大阪・今宮戎神社 “福娘盗撮トラブル”に苦渋の「敷地内で人物の撮影一切禁止」を決断 神社側は「ご奉仕行為の妨げとなる」
NEWSポストセブン
“凡ちゃん”こと大木凡人(ぼんど)さんにインタビュー
「仕事から帰ると家が空っぽに…」大木凡人さんが明かした13歳年下妻との“熟年離婚、部屋に残されていた1通の“手紙”
NEWSポストセブン
太田基裕に恋人が発覚(左:SNSより)
人気2.5次元俳優・太田基裕(38)が元国民的アイドルと“真剣同棲愛”「2人は絶妙な距離を空けて歩いていました」《プロアイドルならではの隠密デート》
NEWSポストセブン
『ザ・ノンフィクション』に出演し話題となった古着店オーナー・あいりさん
《“美女すぎる”でバズった下北沢の女子大生社長(20)》「お金、好きです」上京1年目で両親から借金して起業『ザ・ノンフィクション』に出演して「印象悪いよ」と言われたワケ
NEWSポストセブン