昨今の「糖質オフ」ブームもあり、日本人の糖質摂取量はこの15年間で1日平均15グラム減ったものの、日本の糖尿病患者は2002年の228万人から2014年には317万人まで増加した。糖尿病対策として重要なのが「血糖値を低くコントロールすること」だ。「糖質制限」によって血糖値を上げる原因となる糖質を減らす。これが近年、主流となっている糖尿病への対策であり、そのための食事法も関心を集めている。
糖質制限を行なうことで、確かに一時的に血糖値は下がる。そのため、一刻も早く血糖値を下げなければならない「すでに糖尿病に罹っている人」は、糖質制限を行なって血糖値を下げる意味がある。そもそも糖質制限はダイエット法ではなく「糖尿病治療」だからだ。
2008年にイスラエルの研究チームが中肥満者や糖尿病患者など322人を対象に「低脂肪食」「地中海食(野菜や豆などが中心の食事)」「低炭水化物食」の影響を調べたところ、「低炭水化物食」が最も血糖値と関係していることがわかった。これにより「糖質制限」が糖尿病の食事療法として認知され、糖尿病の最新食事療法として脚光を浴びた。
現在では、米国糖尿病学会が発表している『2014年版 糖尿病臨床ガイドライン』に、糖質制限は「1型糖尿病と2型糖尿病を含む、すべての糖尿病患者に推奨される」とある。
ところが、糖尿病の「治療」ではなく「予防」として有効かどうかは、疑問符がつく。2015年に科学雑誌『PLOSONE』に掲載された国立がん研究センターの研究では、40~69歳の日本人男女6万人を5年間にわたって追跡調査した。
その結果、女性は炭水化物の摂取が少ないほど糖尿病発生のリスクが低下したが、男性は低炭水化物食と糖尿病との関連が見られなかった。そこから「男性は糖質制限を行なっても糖尿病を予防できない」という見方ができる。