東京・渋谷区神山町の高級住宅街に建つ麻生太郎・副総理兼財務相の邸宅から同区の富ヶ谷にある安倍首相の私邸までは直線距離にして約300メートル。間に高い建物はなく、安倍邸の屋上から麻生邸の大きな屋根が見えるという。
さる9月10日夜、麻生氏は安倍邸を訪れた。首相動静によると、この日、他に来客はなく、麻生氏は午後8時20分から首相と会談、安倍邸を辞したのはすっかり夜も更けた午後10時近くになっていた。麻生氏側近が語る。
「麻生さんは外遊から帰国したばかりの総理に10月のトリプル補選の情勢を報告し、解散・総選挙の時期について突っ込んだ話をした」
10月22日投開票の衆院トリプル補選(青森4区、新潟5区、愛媛3区)は安倍政権の行く末を左右する選挙と位置づけられる。いずれも自民党現職の病死による“弔い合戦”とあって首相は「全勝」を掲げたが、3選挙区のうち最も情勢が厳しいのが愛媛3区だ。
苦戦の原因を作ったのは麻生氏だった。麻生氏は同選挙区の候補として亡くなった麻生派所属の白石徹・前代議士の次男で秘書の寛樹氏を擁立した。ところが、寛樹氏に女性スキャンダルが報じられ、「民進党候補に大きくリードされていた」(自民党選対スタッフ)という。党内からはスキャンダル候補を強引に立てた麻生氏に批判が高まり、安倍首相も周囲に「愛媛はどうなっている」と情勢を確認するなど心配していた。
そこに“神風”が吹いた。民進党の山尾志桜里・衆院議員の不倫疑惑と離党だ。これで麻生氏の目の色が変わったという。