JRA10場のうち、東京、中京、新潟が左回り。その他はすべて右回りだ。もちろん馬にも得意な回りはある。数々の名馬を世に送り出した調教師・角居勝彦氏による週刊ポストでの連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」から、馬の利き脚について考察する。
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競馬中継の解説やレース後の騎手のコメントなどで、「手前を替えた」という言葉を聞くことがあります。高速で走る中での動作なので、観ている方には分かりにくい変化ですね。しかしレースに勝つために、とても重要なポイントです。
馬は、たとえばウサギなどとは違って左右の脚の動きをずらして走る。左右の動きが対称型ではなく、左右どちらかの脚を前に出した体勢で走ります。このとき前に出ている脚を手前脚といい、右が前ならば右手前、左が前ならば左手前です。
馬にも右利きと左利きがあって、利き脚を手前にしたほうがよりスピードを発揮する。だからレースの勝負どころでは利き脚を手前にするわけです。ラストの直線ではどの馬も利き脚を手前にして頑張ります。
ところがコースは直線だけではなく、コーナーがあります。
たとえば東京競馬場や新潟競馬場のような左回りコースの場合、コーナーを回るときには左手前でなければならない。手前が逆だと、外側にブレーキをかけるような形で走ってしまう。右利きの馬でも器用な馬は上手に切り替えることができます。