民進党の山尾志桜里・衆院議員の不倫疑惑と離党などもあり、一時期支持率低下に悩んでいた安倍政権への風向きが大きく変わった。それを受けて9月10日、麻生太郎・副総理兼財務相は安倍晋三・首相と会談し、早期の解散・総選挙を強く進言したという。
同じ算段をしていた与党幹部は他にもいた。安倍―麻生会談の翌日、安倍首相は二階俊博・自民党幹事長、山口那津男・公明党代表と相次いで会談した。その2人も総選挙主戦論だ。
茨城県知事選の勝利で勢いに乗る二階氏も山尾不倫報道の直後、政界関係者との会合で10月22日に投開票されるトリプル補選(青森4区、新潟5区、愛媛3区)についてこう怪気炎を上げたという。
「トリプル補選は全勝する。そしたら解散だ。総選挙はオレと筆頭副幹事長の(小泉)進次郎でやる」
一時は各紙とも30%台まで落ち込んだ内閣支持率が北朝鮮危機で50%(読売新聞9月8~10日調査)に回復したことが解散論に拍車をかけている。
公明党はとっくに走り出している。山口代表は同党沖縄県本部の夏季議員研修会(8月23日)で、「(安倍首相が)衆院解散を決断する時には、われわれは、いつでも受けて立つという常在戦場の構えでいないといけない。今から、しっかりと走り抜いていきたい」と号令を掛け、いち早く準備を始めている。
選挙となれば与党の選挙マシンとなる業界へ“撒き餌”が必要になる。二階氏と公明党は臨時国会での補正予算編成で一致し、二階派はなんと「10兆円の景気対策」を主張している。安倍政権は「景気拡大はいざなぎ景気に並んだ」(茂木敏充・経済再生担当相)と胸を張りながら、それでも大型経済対策を打とうというのだから、実にわかりやすいニンジンだ。