もやしや大根などの野菜を「1円」で販売し続けたのは不当廉売(独占禁止法違反)にあたるとして、公正取引委員会が愛知県内の「カネスエ」と「ワイストア」の2スーパーに警告を発する方針だという。
通常、スーパーの特売や超目玉商品は、それこそ「1円でも安く買いたい」という消費者の要望に応えた究極の企業努力ともいえるが、今回のケースはどこに問題があるのか──。流通アナリストでプリモリサーチジャパン代表の鈴木孝之氏が、激安スーパーに潜む儲けのカラクリと苦しい業界事情について語る。
* * *
激安販売が成り立つための要件は2つあります。ひとつは、店(企業)のコスト比率が極端に低いこと。家賃や人件費、光熱・水道代などすべてひっくるめて、安上がりの経費構造を土台にすれば、あまり利益率を取らなくても安売りすることができます。いわゆるディスカウント商法の典型です。
2つ目は業界用語でいう「マージンミックス」です。これは、粗利が十分に取れる商品が他にたくさんあって、仮に激安商品を売ってもソロバン勘定が合うようになっている仕組みです。安売り商品は明らかに原価割れ、仕入れコストを割っているはずですが、その赤字分は他の商品が売れることで埋め合わせしているのです。
しかも、今回のように1円という超目玉商品を出すことで客数は大幅に増えますし、増えた客が他の買い物もしてくれるので、全体の売り上げ増につながるという考え方です。もっとも、いまの消費者は賢く“バーゲンハンター”も多いため、チラシ商品である1円の野菜と数品だけ買って、帰ってしまう人もいるでしょうが。
こうした商法は「ハイ&ロー」といわれ、たとえば太くて立派な大根が通常200円(ハイ)だとすると1円というロー価格は明らかに異常です。一時的な客寄せにはなるかもしれませんが、ずっと続けられる商法ではありません。
また消費者が持つ価格に対する不信感が広がる恐れもあります。
かつて大手スーパーが決算期末に衣料品の半額セールや6割引などを繰り返して問題になったことがあります。じつは納入業者がそのセールのために元の納入価格を上げていたことが判明したのですが、客を高い値引き率でおびき寄せるこうした売り方は、一歩間違えれば“だまし商法”になる可能性があります。