往年の大スターが勢ぞろいで、毎日の楽しみが増えた――今年4月からスタートした『やすらぎの郷』(毎週月~金曜昼12時半~、テレビ朝日系)が、いよいよクライマックスを迎える。大人のための帯ドラマとして新設された“シルバータイム”は、シニア世代を中心に支持され、新たなお昼の楽しみとして定着した。立案者であり、『やすらぎの郷』の脚本家・倉本聰さんは、居を構える北海道・富良野でドラマにかける思いを語った。
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今でこそ老若男女、誰もが楽しめる作品を心がけていますが、若い頃はプロデューサーや役者、評論家たちに対して書くとか、自分の中のどこかにエリート意識が潜んでいたんですよ。それを自覚したのは人生の後半になってから。大きなきっかけは北島三郎さん(80才)でした。
40代の頃にね、実は北島三郎さんの付き人をさせてもらったことがあるんです。サブちゃんの人気が北海道であまりにもすごくて、なんでこんなに人気があるのか知りたくてね。志願して1週間だけ、冬のコンサートツアーに同行させてもらった。コンサートではサブちゃんのヒットパレード以外にリクエストコーナーがあって、「自分は昔、渋谷で流しをやっていたから3000曲くらい頭に入っている。だからみんな、なんでもリクエストしてくれよ」って、サブちゃんがステージから声をかける。すると客席からワッと手が挙がってリクエストがくる。
そこでお客さんとやりとりをするのですが、寅さんの啖呵売(たんかばい)と言えばいいのかな、実に歯切れがいい。どうしてサブちゃんはこういう会話ができるんだろうと。
結局のところ、学識とか、年齢とか、身分とか、そういうものをすべてなくしたゼロの状態の“人間”というところでお客さんと会話をしているんです。純粋に人として向き合って。衝撃でしたね。ものすごく勉強になりました。
その直後に富良野へ移り、テレビ業界と関係ない友人とつきあうようになって、「隣の農家のイトウさんは、畑から疲れ果てて帰ってきて、風呂へ入ってビールを飲みながら、夜10時におれの番組を見てくれるだろうか?」と考えたんです。でも過去の作品を1本1本挙げても、どれもハマらない。自分はどこか上から目線で書いていたんじゃないかって気づいたんです。その反省で書いたのが、『北の国から』でした。
社会が変わっても、人間の本質は変わらないとぼくは思います。生まれてから6~8才の子供は明治時代も今も変わっていない気がする。学校教育や親の教育が子供を変えているだけでね。だからこそ、“海抜ゼロ”の意識で誰にでも楽しめる作品というのを大事にしているんです。
撮影/矢口和也
※女性セブン2017年9月28日号