液体タイプの食器用洗剤が誕生したのは1965年、花王の『ファミリー』から。食の欧米化で増加した油汚れと残留農薬を洗い流すためだった。1990年代、除菌を謳った商品が登場し、コンパクト化が始まる。そしてついに“汚れをこすらず落とす”洗剤の登場に至った。その威力とは?
食器用洗剤に革命が起きた。泡で汚れを分解し、水で流すだけで洗浄が完了する、スポンジいらずの洗剤が誕生したのだ。花王の『キュキュット CLEAR泡スプレー』だ。
昨年10月の発売以来、その威力のすごさは瞬く間に口コミやネットで拡散され、インスタグラムに写真をアップする人が続出。「こんなものを洗ってみた」と題して、リコーダーの中を洗ってみた人、エスプレッソマシーンのフィルターを洗浄した人など、次々と写真がアップされるという事態が発生しているのだ。
販売数は10か月で710万本を記録。一時は生産が追いつかなくなったほど。現在でも、工場をフル稼働させて生産を続けているという。
花王では、『ファミリー』以来、膨大な数の家庭を直接リサーチしてきた。どんな洗い方をしているのか、どこが不便なのか、食器洗いをしているシーンを観察し、商品の盲点を探して改良する。その繰り返しで、より便利な商品を生み出してきた。
我々の暮らしは、高機能で便利な家電や調理器具のおかげで、快適性は日進月歩で向上している。しかし、便利なものほど構造が複雑で、洗浄しにくいのも事実。高機能炊飯ジャーの内蓋、ミキサーやブレンダーの刃、ベビーマグのストローや水筒の飲み口&パッキンなど、スポンジが届かない部分や、油膜の洗浄に困っている人は多い。
今回の開発では、各家庭に専用ブラシやスポンジが何種類もあり、細かい部分の洗浄に綿棒を使うなど、苦労している人が多く、しっかり洗えていないことに着目。そして、新しい界面活性剤の技術により、汚れへの浸透力を強化。『キュキュット CLEAR泡スプレー』では、泡が汚れの奥に入り込み、こすらず洗い流す“浸透クラッシュ洗浄”技術を開発した。その結果、高い洗浄力だけでなく、除菌、除渋、除臭、くすみ落としという4つの衛生機能も付加された。
この、浴室洗剤やトイレ用洗剤では当たり前となっている“泡を吹きかけ流すだけ“という機能を、これまで食器用洗剤で実現できなかったのは、キッチン汚れの成分が多岐にわたり複雑だったから。それだけに、キュキュットのこすらず落とす技術開発には9年もかかったという。
今年7月には、「キュキュット」シリーズ液体タイプも改良新発売された。泡スプレー同様に、洗浄力がパワーアップして、濃密泡が汚れの内部に速く深く浸透し、素早く落とす“ハイブリッド・ウォッシュ”処方となっている。こちらも除菌機能付きだ。
こすらずともスルスル汚れが落ちる――これには感動するかも。
※女性セブン2017年10月5日号