東大の合否を分ける壁は、「5才までの幼児教育」にあった――新刊著書『「東大に入る子」は5歳で決まる』(小学館)でそう説いた精神科医の和田秀樹先生が、子供4人を全員東大理IIIに現役合格させた“名物教育ママ”佐藤亮子さんと対談するとなれば、盛り上がらないはずがない。アンチ学歴至上主義もなんのその、幼児期の詰め込み教育の重要性をテーマとした対談が実現した。
和田:著書でも書いたのですが「幼児期は情操教育に重きを置くべきだ」という意見に私は反対です。歌や絵を描いたり、野原を走り回ったり。そういうことをやらずに勉強ばかりさせることを問題視する声がありますが、幼児が好き放題に生きたら動物にしかならない。言葉を覚え、数字を覚え、物が読めるようになる方がよほど大切です。
子供にとって、自分が賢くなっていくことは快体験であり、学習行為はまったく苦ではないんです。新たな知識を得て世界が広がっていくこと以上の喜びはありません。親の軽率な思い込みが、幼児の貴重な学習欲求を潰してしまっている。
佐藤:「子供はのびのびと育てるべきだ」という意見ですよね。私も大嫌い(笑い)。のびのびって、魔法の言葉ですよ。そういいながら、子供をほったらかしている母親がいかに多いか。勉強がのびのびとできればいいじゃないですか。学校の勉強が先に進んでいれば授業も俯瞰できるし、授業中ものびのびできる。これが本当ののびのびですよ。
和田:「芸術やスポーツの道が閉ざされてしまう」という声が出るのもわかります。でもあえて言いますが、学歴の高い人ほど人生の選択肢は多くなる。私の灘高時代の先輩は東大卒業後に板前になりましたし、東大卒のジャズ歌手もいる。幼少期に安易な情操教育に走り、勉学をおろそかにする方が、子供の未来を奪っています。
佐藤:先生はご著書で「東大に行くことはリスクヘッジになる」とお書きになられていましたよね。これって私もすごくわかるんです。「いい大学に行かなくても人生は成功する」という親がいますが、それは都合のいいサンプルを1つ持ってきているだけ。その裏に何億倍も失敗している人がいるわけでしょう。
うちも、もし子供たちが「役者の道に行きたい」とか「音楽の道に進みたい」と言ってきたとしても、まず東大に行って卒業証書を取ってから進め、と説いたはずです。子育ての最終目的は自立ではなく自活。医師免許取って自分で食い扶持を確保した後であれば、好きに生きろ、と。
和田:ぼくも17才の時に映画監督になりたいという夢を持って、47才でやっとその夢がかなった。30年越しでしたが、夢を捨てないですむ最良の方法は、勉学に勤しみ資格を得ることなんだなと、その時に改めて思いましたね。
※女性セブン2017年10月5日号