9月12日、神戸市の自宅付近で任侠山口組・織田絆誠代表の乗った車が襲撃に遭い、ボディガードが射殺された事件は、10日が経過したいまなお実行犯が逮捕されていない(9月21日現在)。指名手配されたのは、神戸山口組の井上邦雄組長の出身母体にして中核組織、山健組傘下の組員、菱川龍己容疑者だった。
つまり、六代目山口組から分裂した神戸山口組と、そこから再分裂した任侠山口組の間で、抗争が勃発したということになる。
「菱川容疑者は通名を黒木といい、一勢会という『山健組の秘密兵器』と呼ばれる組に属していた。この一勢会は先代の勢昇会長みずから、山口組系幹部刺殺の実行犯として指名手配され、7年も逃亡し続けているわけだから、それだけの資金力や支援体制があるということ。山健組関係者によれば、『黒木は事件の1か月ほど前から姿を隠し、ヒットマンとして織田代表を狙っていた』という」(ジャーナリストの伊藤博敏氏)
果たして警察は彼を逮捕できるのか。捜査関係者は焦りを隠せない。
「警察が危惧しているのは、我々が逮捕する前に任侠山口組の人間に報復されることだ。そうなれば神戸側も黙っているわけにはいかず、報復の応酬になってしまう。警察も制御できず、一般市民が巻き添えになる最悪の事態も想定される」
山口組分裂抗争を取材するライターの鈴木智彦氏は、別のシナリオを口にする。
「兵庫県警の関係者は事件当初から『2週間以内に捕まえられないと危ない』と言っていた。国外逃亡、任侠山口組による報復のほかに、『身内の神戸山口組に口封じされることすらあり得る』と。これまでの抗争でヒットマンが身内に殺された例はないため、まさかとは思うが……。いずれにせよ現代の暴力団抗争では、一人しか殺していなくても実行犯は無期懲役となるため、自首はあり得ない。菱川容疑者がどうなるかが抗争の今後を左右するのは間違いない」
衆人環視の中で白昼堂々と殺害事件を起こした犯人を検挙できないとなれば、日本の治安にも大きな不安が残る。
※週刊ポスト2017年10月6日号