大相撲秋場所は横綱も大関も次々と土俵から去り、若手力士たちが鮮烈な印象を残した場所となった。そして、彼らを“震源”として、角界の勢力図が大きく塗り替えられようとしている。
秋場所で躍進した阿武咲、貴景勝ら若手勢たちはいずれもガチンコ横綱として名を馳せた貴乃花親方に近いグループの部屋で薫陶を受けた力士たちだ。貴乃花親方の現役時代に全力でぶつかり合った若手親方たちは、今も貴乃花親方を慕っており、一門の枠を超えたそのグループから、着々と若い力が育っている。
そして、この“激変”は相撲協会内での主導権争いにまで影響を及ぼしそうだ。貴乃花親方は昨年3月の理事長選で敗れ、現在の協会は八角理事長(元横綱・北勝海)が取り仕切る。
貴乃花一門自体は今も少数派だが、2年に一度の理事長選が来年早々に迫るなか、「相撲への真摯な姿勢に共鳴し、一門の縛りを超えて貴乃花親方を支持する動きが広がっている。すでに半数近い親方が“貴グループ”だ」(若手親方の一人)という声まである。
対照的に、八角理事長に近い主流派の部屋の力士は秋場所で精彩を欠いた。出羽海一門の境川部屋に所属する大関・豪栄道が孤軍奮闘したくらい。
さらに、相次ぐ上位陣の休場に執行部批判も高まり、「初日から休場していた碧山や佐田の海ら出羽海一門傘下の力士が、場所途中から強行出場したのも、主流派が批判を和らげようとしたからではないか」(同前)とみられているほどだ。
対照的な現状の両陣営。来春の理事長選後、“この秋場所が転換点だった”と思うことになるのかもしれない。
※週刊ポスト2017年10月6日号