相次ぐミサイル発射などで北朝鮮に対し、国際社会は厳しい制裁決議を課している。だが、その効果は極めて低い。なぜならば、中国の朝鮮族を中心にした秘密結社組織「朝鮮幇(パン=マフィア)」が暗躍、北朝鮮と密貿易を繰り返しているのだ。ジャーナリストの相馬勝氏が中朝国境の遼寧省丹東での朝鮮幇の実態を取材した。
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米財務省の元高官で、対北経済制裁の立案に長年携わってきた北朝鮮専門家のアンソニー・ルジエロ氏は7月19日、下院金融委員会の公聴会で、北朝鮮が2009年から2017年まで中国の銀行を経由して、核・ミサイル開発に使われた製品など、少なくとも22億ドル分の軍事転用が可能な民生品の取引を行ったとの分析結果を明らかにしている。
さらに、同氏は公聴会で、「丹東市にある貿易会社は2009~2016年に13億ドルの取引をして、米政府の独自制裁対象となった」と指摘。この会社は「丹東鴻祥実業発展有限公司」で、北朝鮮の大量破壊兵器拡散に関与したとして、昨年9月、米国の制裁対象に指定された。女性経営者の馬暁紅は中国当局に逮捕されている。
馬は現在45歳だが、2013年3月から逮捕前の昨年8月まで、日本の県会議員に相当する遼寧省人民代表大会代表を務め、省政府とのつながりが深い地元の有力者だった。さらに、馬と同じく、丹東市政府の税関部門の課長を含む担当者20人以上も逮捕されており、密輸は官民ぐるみの組織的な犯行である。