買い物をする際、誰しも商品のコピーに惹かれて購入してしまったという経験があるだろう。人々の心を掴んで離さない名コピーはこれまで幾多生まれては消えてきた。そこにはコピーライターたちの美学があった──。
9月11日から17日まで大阪で開催された「宣伝会議コピーライター養成講座60周年記念イベント『コピージアム2017』」(東京は9月3日に終了。10月1日まで金沢で開催。以降、札幌、名古屋、福岡にも巡回予定)には、5000人を超える来場者が足を運んだ。その時代、時代で輝いた幾多の名コピーについて、このイベントを主催している株式会社宣伝会議の谷口優・月刊『宣伝会議』編集長の解説とともに振り返っていきたい。
◆1960年代~1970年代
「第一次池田勇人内閣が国民所得倍増計画を発表したのが1960年。高度経済成長期、豊かで新しい憧れの生活を訴求する広告が中心でした」(谷口編集長)
東海道新幹線が開通し、東京オリンピックが開催された1964年は、海外渡航が自由化された年。「トリスを飲んでHawaiiへ行こう!」(1961年)は、高まりつつある庶民の羨望をいち早くキャッチしたコピーだった。
また、車(カー)、クーラー、カラーテレビの「3C」が人々の生活に浸透するなど、高度経済成長の波に乗って拡大する日本経済を表現した「大きいことは いいことだ」のようなコピーが多いのもこの時代の特徴である。
「一方、1970年代の広告は、モノだけでなく、そのモノがある素敵なライフスタイルも提案・訴求するようになりました。『金曜日はワインを買う日。』などは、新たなライフスタイルを提案した象徴的なコピーといえます」(谷口編集長)
さらに1970年代は『an・an』や『non-no』などの女性誌が相次いで創刊された。働く女性が増え始め、そんな彼女たちに向けられたコピーが登場したのもこの時代である。
「女性の地位が向上したためか、1975年に放送されたハウス食品のCM『私作る人、僕食べる人』は賛否両論を巻き起こし、結局、このCMは放送中止に追い込まれました」(谷口編集長)
◆1980年代~1990年代
コピー黄金期・成熟期といわれる1980年代・1990年代。
「今も市場に残るロングセラー商品が多く登場した時期です。画期的な機能や特徴を持つ商品の登場によって、コピーも斬新で魅力的な表現が増えた。また1990年代になると、新しい女性像が描かれているのが特徴。単に商品を売るだけでなく、その企業で働く人や関わる人のモチベーションを上げるような広告も出てきました」(谷口編集長)
『ルミネ』などのコピーを手掛けている広告会社・博報堂のコピーライターである尾形真理子さんも、この時期に誕生したコピーに心を奪われた1人。