【著者に訊け】
戸部田誠さん/『笑福亭鶴瓶論』/新潮新書/886円
【内容】
〈笑福亭鶴瓶こそ、“最強”である〉。デビュー直後から現在に至るまで、毎日のようにテレビ・ラジオに出続けていながら、鶴瓶の本当のスゴさを知る人は少ないという。そのスゴさの秘密を「スケベ」というキーワードで解き明かしていく。膨大な雑誌や本の資料、テレビ番組の記録など、本人が語った言葉から積み上げられていく鶴瓶論全28話。どこまでもスケベで、人の心を鷲掴みする鶴瓶の魅力が浮かび上がる。
分け隔てない親しみやすい笑顔の奥に底知れなさも感じさせる、テレビの人気者の魅力と人生哲学を掘り下げた。キーワードは、鶴瓶さんが自分を語るときに口にする「スケベ」という言葉だ。
「鶴瓶さん、というとやっぱり見た目から『スケベ』って感じがするじゃないですか。この本では、その奥にある貪欲さだったり純情さだったりも含めての姿勢に『スケベ』という言葉をあてています」(戸部田さん、以下「」内同)
雑誌のインタビュー記事やテレビやラジオの発言、タモリ、ビートたけし、明石家さんまら同時代人の発言にも丹念にあたり、多角的に鶴瓶像を立ち上げていった。
「雑誌と違ってテレビやラジオは後から追いかけることが難しいんですけど、昔から、いい言葉を聞いたらその都度メモしておいたので、その蓄積もありました」
さすが、自他ともに認める「テレビっ子」。最近のテレビがつまらないとよく言われることにも、「そんなことないです」と言う。
「面白いものを見つける努力をしないとなかなか面白いものに巡り合わない不便さはありますけど面白いものはあるんです」
「笑福亭鶴瓶」は、ライターとしていつか書きたい、「野望」だったという。それがいきなり連載の企画が通り、本にもなった。本が出て、鶴瓶さん本人から電話がかかってきたそうだ。
「これから番組(『きらきらアフロ』)の収録で、本を紹介するから、って。『俺は読んでないけど』とのことでしたけど、本当に読んでないかはわかりません。本を読んだ一般の人からも鶴瓶さんに電話があるらしく、『本に出てくる○○の話、知ってる?って、知ってるわ、俺の話やで?』って(笑い)」
その時、どこに住んでるの、となにげなく聞かれた。これは収録に来てもいいよということかなと、急きょスタジオにかけつけた。
「人づきあいが苦手で、これまでの自分なら相手に迷惑かなと考えて絶対行ってなかったと思うんですけど、この本で、『スケベ』にどんどん人に会いに行く鶴瓶さんのことを書いたので、実践しないわけにはいきません(笑い)。鶴瓶さんも快く受け入れてくださって、やっぱりそうして踏み込むことで道は拓けると実感しました」
(取材・文/佐久間文子)
※女性セブン2017年10月12日号