患者はがんと向き合ったとき、どんな「武器=治療法」を選ぶべきなのか…“セカンドオピニオン”の考え方が広まり、その選択に悩む人も少なくない。そんななか、先月発表された「がん治療法」についての調査結果が驚きとともに受けとめられている。
米エール大学調査チームの発表によると、がん治療において「代替医療」を受けた患者の死亡率は、「標準治療」を受けた患者の2.5倍にものぼるという。松戸市立病院の腫瘍内科医・五月女隆氏が解説する。
「科学的に効果が証明されている、手術、抗がん剤やホルモン治療などの投薬、放射線治療の『標準治療』以外のすべての治療法を『代替医療』と呼んでいます。代替医療は科学的に効果が証明されておらず、保険は適用されていません」
免疫療法、がん遺伝子療法、ビタミン投与、食事療法、水素温熱療法、イメージ療法、漢方、鍼、ワクチン投与、アーユルヴェーダ…日本には100種類以上の代替医療が存在するといわれている。
エール大の調査は、2004年から2013年に米国のデータベースに登録された、転移のない乳がん、大腸がん、肺がん、前立腺がんの患者が対象。標準治療を選んだ560人と、代替医療を選んだ281人の5年生存率を比較した。
その結果、代替医療の患者は、乳がんでは5.68倍、大腸がんで4.57倍、肺がんでは2.17倍も死亡リスクが高く、平均で2.5倍だった。ちなみに、今回の調査では代替医療の具体的な種類や、代替医療別の死亡率の違いは示されていない。
注目されるのが、代替医療に頼るのは「乳がん患者」が多く、さらに「高学歴」「高収入」という共通点があったことだ。
「高学歴の人、つまり普段から人より多くの情報を得ている人は、同時に不要な知識も得てしまうので、がん治療の混乱のもとになるんです。
最近はネットや本、新聞などで、“新薬が開発された”“○○で末期がんが治った”といった言葉をよく目にします。また、“抗がん剤は効かない”“医者を疑え”といった医師や標準治療に不信感を抱かせる言葉も多い。
すると、いざがんになった時、医師の勧める治療法では納得がいかなくなる。そして自力で調べた結果、“特別な治療法”を見つけ、藁わらにもすがる思いで頼ってしまうんです。 また、代替医療は保険適用外のため治療費が高額。だから高収入の人ほど、安易に手を出してしまいがちです」(前出・五月女氏)
※女性セブン2017年10月12日号