米トランプ大統領が「北朝鮮を完全に破壊する以外の選択はない」と叫べば、金正恩・朝鮮労働党委員長が「米国のおいぼれを必ず火で罰する」と返す。さらにトランプ氏が「ちびのロケットマンの考えを繰り返すなら、彼らの先は長くない」と挑発を繰り返す──。
米朝トップの“罵倒の応酬”が、開戦のゴングを鳴らすのではないかという不安が世界で広がっている。米国政治と安全保障に詳しい国際ジャーナリストの春名幹男氏が言う。
「北朝鮮に核を放棄させることは非常に難しい。経済制裁で兵糧攻めにしたところで、彼らは“草を食べてでも核開発をする”と言われているほどなので、逆に核へのこだわりを強くするだけです。
このまま両者が引き際を見失い挑発の応酬が激しさを増していけば、軍事的なアクシデントを誘発する可能性はゼロではありません」
世界中が最悪のシナリオを想定し始めた中で、驚きの提案をしたのが、かつて訪朝して金日成と会談したことがあるジミー・カーター元大統領だった。
カーター氏は9月12日ジョージア州アトランタで講演し、米国が取るべき対北朝鮮政策に対して、「私が大統領だったら平壌に自分が行くか、最側近を今すぐ派遣する」と述べ、トランプ氏に“直接対話”に乗り出すよう促したのだ。元外務省情報局長で評論家の孫崎享氏が言う。
「米国内の世論は、武力行使賛成は20%台にとどまる一方、外交で解決すべきとの声は約50%にのぼります。米国の安全保障の専門家の間でも制裁や軍事行動でなく“対話によって解決すべき”との意見のほうが支配的です。米国民は冷静に事態を見ており、カーター提案は決して否定的に受け止められていません」
※週刊ポスト2017年10月13・20日号