「猿は木から落ちても猿だが、代議士は選挙に落ちればただの人だ」とは、自民党結党の立役者の1人、大野伴睦・元衆院議長の言葉だ。しかし、ひとたび議員特権の甘い蜜を吸った議員たちは、「ただの人」に戻ることに耐えられないらしい。だから、選挙のたびに世論の風向きを見て、当選しやすい政党や選挙区を渡り歩く政治家が後を絶たない。政策や理念はどうでもいいのだ──。
その典型が木内孝胤(たかたね)氏だ。政権交代ブームの2009年総選挙で民主党から初当選し、自民党が政権を奪回した2012年総選挙で日本未来の党で落選すると、2014年総選挙には維新の党に移って当選、その後、民進党に合流した後、今回は小池新党「希望の党」からの出馬を表明した。
柿沢未途氏もみんなの党から当選後、2014年総選挙は維新の党、その後、民進党に合流したあと、離党して小池新党に加わった。
鈴木貴子氏は父の宗男氏が代表を務める新党大地から始まり、民主党、自民党へと渡った。選挙・政治制度論が専門の湯浅墾道・情報セキュリティ大学院大学教授が言う。
「自民党で当選した福田峰之・前内閣副大臣が選挙で対決する小池新党に移ったり、民主党から維新の党、今回は小池新党と飛び石みたいに政党を渡り歩くのは有権者にとって理解し難い行動です。選挙の目的は、当選させたい人を選ぶだけでなく、この人には政治を任せたくないと落選させることも有権者の判断です。政治理念や政策を持たず、議員の身分を維持したいために渡り鳥をする政治家は、国政の重要な課題で判断を迫られたときも、保身を最優先に考える。そうした政治家は国民のためになりません」