もやし炒めに混ざった、プラスチックの破片。ご飯の中につまようじ。容器のふちには古いご飯がカピカピに乾いた状態でこびりついている。容器からは、シンナーのようなツンとした刺激臭が立ち上がってくる。
「ふたを開けると、容器とおかずのにおいが一気に混ざり合って、めちゃくちゃくさいんです。生ゴミやゲロと同じくらいのくささ。食べようとすると、あまりのにおいに吐きそうになって、ふたを閉じる毎日です。午後の授業はお腹が空いてつらいけど、ゲロを食べるよりはマシだから」(大磯町の中学生)
神奈川県大磯町で明らかになった「まずい給食」問題。2016年から2つの町立中学校で導入された民間業者の給食に、大量の食べ残しがあることが発覚した。2校の食べ残し率は平均26%、多い日は55%にものぼった。これは全国平均の6.9%をはるかに上回る。
“まずい”だけならまだしも、冒頭のような異物混入が頻繁に発生していることも問題視された。保護者が胸中を明かす。
「騒動後、持参のお弁当と給食から選べるようになったのでウチの子も含め、ほとんどの生徒がお弁当です。給食を食べているのは、クラスに5人ほどのごく一部の生徒と先生くらいでしょうか。しかも、今も問題のあった給食業者のままです。対応が遅くて不誠実な学校には疑問と怒りでいっぱいです」
学校に取材を申し込むも、「対応できない」の一点ばり。教育委員会の回答も同様だった。これでは、生徒や保護者の不安はつのるばかりだ。
しかし、類似した問題は全国で散見される。跡見学園女子大学の鳫(がん)咲子教授が言う。
「大磯町のようなケースは初めてではありません。大阪市や神戸市でも同様の問題が起こっていました。『これは食事じゃなくて餌だ』という抗議がありましたし、異物混入が報告されたこともあります」
給食を取り巻く環境はかなり悪化しているのが現状である。それでも、学校給食の実施率は年々上昇している。
学校給食が始まったのは1889年。山形県の小学校で、貧困にあえぐ子供たちの救済が目的だった。そこから100年超。外食チェーン店やコンビニでも手軽においしい食品を手に入れられるようになった現代において、給食だけが、時代と逆行しているのはなぜなのか。