8月に発足した「仕事人内閣」の大臣のうち、初入閣の6人中4人が世襲大臣だ。これで安倍内閣の世襲議員は安倍首相、麻生太郎・副総理兼財務相を含めて20人中13人を占める──。『安倍三代』(朝日新聞出版刊)の著者でジャーナリストの青木理氏が語る。
「現在、国会議員の4分の1が世襲で、自民党に限れば3分の1、そして大臣は6割以上と政権の中枢にいくほど割合が大きくなる。親から地盤(後援会)、看板(知名度)、カバン(政治資金の集金力)を引き継ぐことができる世襲議員は選挙に強く、親の七光りで出世が早い。その代わり、『家業』として議員を引き継いでいるから、庶民の暮らしをしたり、自分でゼロから有権者と向き合って選挙地盤をつくったことがない。
麻生さんは初出馬のとき、選挙カーに乗って“下々の皆さん、私が吉田茂の孫の麻生太郎でございます”と挨拶したという伝説まであるくらい。誇張はあるにしても、庶民感覚が分からないことは数々の失言が証明している」
早い出世の世襲議員に実力が伴えばいいが、「七光り」だけの大臣が登場すると国民は不幸だ。麻生氏も首相時代を含めて何の実績も残していない。石原伸晃氏は幹事長時代、福島第一原発を「第一サティアン」、環境大臣時代に原発汚染土の中間処理施設について「最後は金目でしょ」など被災者の感情を逆なでする発言を連発した。塩崎恭久・前厚労相は、「受動喫煙防止法案を成立させる」と大見得を切って党内の反対でつぶされるというひ弱さを露呈した。
「二世、三世は政治資金で苦労しない。だからカネには比較的クリーンで、口では勇ましいことをいう世間知らずのタカ派のボンボン議員が増え、政治家の質がどんどん劣化している。安倍政権で危機管理を担っているのは叩き上げの菅官房長官。修羅場をくぐっていない名門政治家や家業政治家は本当の危機になると通用しない」(青木氏)
※週刊ポスト2017年10月13・20日号