「ゴキブリ取りなんか1日でいっぱいや。大きいの小さいの何匹も重なってな。すぐ真っ黒になる。ベランダにもゾロゾロと大量に出る。洗濯物なんか干せんで、ホンマ。“原因”はわかっとったけど、誰も言えんでな」
うなだれながら話すのは、大阪府門真市のあるマンション住人。閑静な住宅街に建つ、薄ピンクのモダンな鉄骨マンションだが、どの部屋も玄関のドアノブに防虫剤が掛けられ、ゴキブリ取りが置かれている。マンション中に漂うのは、食物の腐ったような、形容しがたいにおい──。
9月1日、このマンションの1階の一室で、女性の遺体が発見された。死体遺棄容疑で逮捕されたのは、同室に住む山口逸子容疑者(65才)。遺体は彼女の3才下の妹とされているが、損傷が激しすぎて性別さえ判明できていないという。遺体は玄関に置かれた収納ボックスに入れられており、死後すでに2年以上が経過していると見られている。
「妹は知的障害があり、山口容疑者が面倒を見ていたようです。何が原因でいつ亡くなったのか、いまだ不明。取り調べに対し、“家に帰ったら死んでいた”と、遺体を収納ボックスに入れたことは認めています」(全国紙記者)
通常、マンションの一室で長期間遺体を放置すれば異臭騒ぎで住人も異変に気づくはずだが、彼女の場合は事情が違った。
「もともととんでもないゴミ屋敷だったんです。2LDKの部屋には、天井まで全てゴミで埋まっていた。逮捕された山口容疑者は、わずかな隙間で生活していたそうです。警察が全てのゴミを運び出すのに20日かかったほど。遺体の腐臭以前に、生ゴミの異臭が全てを覆い隠していたのでしょう」(前出・全国紙記者)
このマンションにはゴキブリや小バエが常時大量に発生しており、我慢できずに引っ越す住人も多かったという。容疑者の上の階に住む男性住人が語る。
「異臭の原因があの部屋だっちゅうのはわかってたけど、まさか遺体があるとは予想もしとらんかった。警察がゴミを回収するんで4tトラックで何度も往復しとってな。相当ヤバい部屋なんやろな、とは思ってたけど…。
いつも地べたでご飯食べてたり、誰ともしゃべらんし、目も合わさんばあさんで、わしらもかかわりたくなかった。誰も注意したりせんかったの。でも住人はみんな苦労しとったよ。ベランダにゴミ袋を置くとゴキブリが何十匹も来るからね。殺虫剤で殺して、ほうきとちりとりでかき集めて捨てて。そのうち麻痺してきて、もうゴキブリが出るのは普通になっとった」
あまりの異臭に捜査員さえ何度も休憩を取りながら作業を続けたという現場だが、程度の差こそあれ、こうした「マンションゴミ屋敷」は今、全国各地に存在しているという。
※女性セブン2017年10月19日号