国立がん研究センターは9月20日、「日本のがん罹患数・率の最新全国推計値」を公表した。これは、2013年にがんと診断された男女約86万人を対象に、47都道府県ごとに「部位別」のがん罹患率(発症率)を調べたもの。
この調査で浮き彫りになったのは、乳がん患者が増えているということだ。調査結果では、全体のがん罹患者数は前年より約3000人減ったが、乳がんの罹患者は約3000人増えた。
都道府県別の罹患率は、1位広島、2位沖縄、3位東京となった。ナグモクリニック総院長の南雲吉則さんが語る。
「この30年で日本人の乳がん罹患率は3倍になりました。最も大きな要因は食生活の欧米化です。乳房や乳がんを成長させるのは女性ホルモン。この女性ホルモンの材料となるのは血液中のコレステロールです。コレステロール値が高くなるのは、肥満や暴飲暴食のかた。すなわち食生活が乳がんを増やしているといえます」
顕著な例は乳がん罹患率が2位の沖縄だ。肥満度を示す体格指数であるBMI指数は全国トップ。罹患率のアップにつながっているといえるだろう。
沖縄が2012年の37位から2位にまで順位を上げたのは他にも理由がある。乳がん検診受診率が大幅に上がったのだ。2912年の受診率は17.3%と全国30位だったにもかかわらず、自治体の懸命な啓蒙活動の末、翌2013年は全国2位の44.9%にまで上がった。
罹患率1位の広島はお肉の消費量が全国トップ。コレステロールの高い食文化が乳がん発症の要因かもしれない。
乳がんとの関係で指摘されるもう1つの要因は、「出産」である。弘前大学医学部附属病院医療情報部准教授の松坂方士さんが解説する。
「女性は妊娠、出産によって乳がんに影響を及ぼす女性ホルモンのバランスが変化します。海外の研究では、出産経験のない女性は経験のある女性より乳がんリスクが高くなり、出産回数が多いほど、リスクは低下しました。また初産年齢が高くなるほど乳がんリスクが上がることもわかっています。現代は東京などの大都市での女性の未婚化や高齢出産が増えたため、乳がんリスクも増したと推測できます」
確かに2013年の東京の出生率は1.13人と全国ワースト1位。乳がん罹患率3位の引き金となっているのかもしれない。
もう1つの婦人科がんである子宮がんの罹患率は、1位沖縄、2位熊本、3位佐賀となった。
「子宮がんは子宮頸がんと子宮体がんに大別されます。このうち子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することで発症しますが、地域差の原因はとらえにくい。一方の子宮体がんは、乳がんと同じく、妊娠回数やBMIの数値が関連すると考えられます」(松坂さん)
※女性セブン2017年10月19日号