国立がん研究センターは9月20日、「日本のがん罹患数・率の最新全国推計値」を公表した。これは、2013年にがんと診断された男女約86万人を対象に、47都道府県ごとに「部位別」のがん罹患率(発症率)を調べたものだ。
この調査結果を見ると、早期で発見されることの多い胃がんの罹患率が、秋田、山形、福井、石川、新潟など、北国の日本海側で高い傾向にあることがわかる。新潟大学名誉教授の岡田正彦さんが解説する。
「昔から胃がんと塩分摂取量は関係するといわれます。冬が寒く大雪の降る地域は、漬け物や干ものなど塩分の多い食生活になりやすく、胃がんの発症率が高まると考えられます。胃がん罹患率2位の秋田は、塩分摂取量全国6位。逆に摂取量が最も少ない沖縄は、胃がんの罹患率がいちばん低い県となっています」
肺がんの罹患率は、鳥取、広島、北海道、と続くが、死亡率で見ると北海道が1位となっている。
「肺がんの最大のリスク要因は喫煙です。北海道は喫煙率が全国で1位です。また一般的には環境汚染も肺がんの要因とされます」(岡田さん)
女性で死亡数が最も多い大腸がんは東北、北陸、近畿が目立つ。弘前大学医学部附属病院医療情報部准教授の松坂方士さんはこう話す。
「大腸がんの危険因子としては飲酒量や肥満度、運動不足などの生活習慣が指摘されます」
罹患率1位の秋田はアルコール消費量が全国4位、BMI値の平均値が全国で5位。一日の平均歩数も全国で最も低く、こうした生活習慣が大腸がんをもたらすと推測できる。一連の結果を各自治体はどう受け止めるのか。全部位のがんで罹患率が2番目に高かった秋田は、生活習慣の影響を認める。
「雪が多い秋田は冬になると外に出づらく、とくに高齢者は転倒のリスクを避けるため自宅にこもりがちで歩行数が少なくなり、BMI値が高くなる。加えて塩分摂取量が多いことががんにかかりやすい要因だと考えられます」(秋田県健康福祉部健康推進課がん対策室)
一方で全部位のがんの罹患率が全国で4番目に低かった大分は、「食生活」を健康の理由に挙げる。
「消化器系のがんが少ないのは、食生活が一因と考えています。はっきりした因果関係は不明ですが、食物繊維が豊富なしいたけの消費量が全国1位。免疫力を高め、がん細胞の増殖を抑制するといわれる里いもも多く消費します」(大分県健康づくり支援課)
求められるのは地域ごとの課題に応じたがん対策。一例が秋田が進める「減塩運動」だ。
「今年から、70もの団体と一緒に健康を啓発する活動を行っています。中には各家庭でおみそ汁を作ってもらい塩分濃度を測って、注意喚起するというのもあります。目指すは“健康長寿日本1位”です」(前出・秋田県健康福祉部健康推進課がん対策室)
今回の調査結果は限定的なデータに基づくものであり、地域格差の一端を示したものにすぎない。2018年にはより精度の高い「全国がん登録」に基づく各種データの公表が予定されており、女性セブンは引き続き注目していく。
※女性セブン2017年10月19日号