人生観、死生観が一変する、と大反響。在宅看取り1000人以上の名医が、最期を自宅で過ごした人々の奇跡と笑顔のエピソードを描いた『なんとめでたいご臨終』(小笠原文雄・著)が発売3か月で早くも5刷のベストセラーになっている。
もう病気が治らないなら最期を自宅で過ごすと決めて、退院した人。老親の願いを叶えるため、自宅で看取ろうと決めた人。亡くなった親の最期を思い出した人…。みなさん、それぞれに熱い思いを重ねながら本書を読んで、気持ちを新たにしている。
東京家政大学名誉教授でNPO法人「高齢社会をよくする女性の会」理事長の樋口恵子さんは同書をどう読んだのか。話を聞いた。
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私は現在85才。本に出てくるように最期まで自宅で穏やかに暮らし、ぴんぴんころりと旅立てたら、それは幸せなことだろうなぁと思いました。
この本は、すべて最期を自宅で過ごすことを選んだ人たちのケーススタディーで、1人として同じ状況の人は出てきません。性別も年齢もバラバラ。がん以外にも難病もあれば認知症もある。切れば血の出そうな、在宅医療の最先端の情報がぎっしり詰まっていることに感心しました。
超高齢化社会を迎え、高齢者が身の回りに充満しているということは、否応なく、遠からず親しい人の死が充満する時代になるわけです。そんな長寿社会、多死社会において、この本は大事な教養書だと思いました。というのも、死を扱いながら、読後感が明るい。ちょっと死が怖くなくなります。死は、生老病死という人間のひと続きの物語の“最後のエピソード”にすぎないんだと気づかされますから。
その一方、この本を読むと、国が在宅医療に大きく舵を切っている中で課題も浮かび上がります。最新の国民生活基礎調査を見ると、介護する人とされる人の両方ともが65才以上という「老老介護」世帯の割合が54.7%、75才以上の人が30.2%。日本の在宅の介護能力は現状、ものすごく低いんです。