公道に溢れ出るゴミの山、偏屈な家の主、困り果てる近隣住人…。「ゴミ屋敷」と聞いて思い浮かべるこうしたイメージは、今や昔のものになりつつある。昨今、外から見えない「マンションゴミ屋敷」が激増している。
サインはゴキブリ発生と消えぬ異臭。気づいた時にはもはや手遅れ、壁の向こうにはおぞましい光景が広がっている。ゴミ屋敷の現実を知るべく、本誌・女性セブン記者は清掃業と遺品整理代行を手がける清掃会社『まごのて』の清掃現場に密着した。
9月下旬の朝8時、佐々木久史社長と従業員4名と共に向かった先は、東京都心のある高級マンション。10階の角部屋に入ると、依頼人である40代女性が出迎えた。
「あ、どうも…。今日はよろしくお願いいたします」
白のニットにグレーのロングスカート。一見するとごく普通の女性に見える。だが室内に一歩踏み込むと、地獄絵図が広がっていた。
1LDKの室内には食べかけのコンビニ弁当やカップ麺、ペットボトル、脱ぎ散らかされた洋服が散乱し、床が見えない。部屋の四隅にはゴミ袋が積み重なっている。
「最後に掃除したのは2年前」(依頼人)というその室内には腐った生ゴミのにおいが充満していた。強烈な異臭はマスク越しにも感じることができる。
ベッドの上にもペットボトルが散乱しており、僅かな布団スペースで寝起きしていたらしい。浴室はさらに悲惨だった。トイレと兼用のユニットバスの床に、使用済みの生理用ナプキンが300枚以上積まれている。
「これくらいならまだマシな方ですね」
佐々木社長にそう言われながらゴミをかき集め、1階のトラックに運んでいく。「洋服とジャニーズ関連のグッズだけは捨てないでください」という依頼人の要望があり、ゴミ山の“仕分け作業”も大変である。
カップ麺の空き容器を片づけていると、中に巣くう大量の小バエが空中に舞う。だが佐々木社長を含め、従業員は誰一人気にもとめず、淡々と汚物をゴミ袋に入れていく。全室の拭き掃除を終え、作業が終了したのは昼12時過ぎ。最終的に、45Lのゴミ袋を120枚使用した。
「本当にありがとうございました。次の休みには掃除しようと思いながら、ここまで来ちゃって…。今後はきちんとゴミ捨てもやります」
床、壁、台所、浴室と全てが見違えるほどきれいになった部屋を見渡しながら、依頼人はそう言って頭を下げた。この日の代金は17万円。
「1K~1DKで生活ゴミを2年程度溜めた場合、作業費と処分費、トラック経費を合わせて13万~17万円前後。あくまで目安で、部屋によって変動します。決して安くはない値段ですが、それに見合った作業内容だという自負はあります」(佐々木社長)
記者の体には、清掃後半日以上経っても腐臭がこびりついていた。
※女性セブン2017年10月19日号