5年に1回の大規模な最高指導部人事が行われる中国共産党全国代表大会が10月に迫るなか、7月中旬に「ポスト習近平」の最高幹部候補として有力視されていた孫政才・重慶市党委書記が「重大な規律違反」で身柄を拘束され、わずか2か月後に党籍をはく奪された。その孫氏の事件を関与したとして、10数人の幹部が腐敗容疑で取り調べを受けており、実質的に失脚していることが明らかになった。
ネット上では、「国営新華社通信は孫政才を『怠け者、職務怠慢、能力が不足している』とぼろくそに批判しているが、その怠け者云々の幹部を中国の内陸部最大の都市、重慶市のトップに据えて、党内25人の最高指導部の1人に任命した習近平の責任はどうなるのか」との激しい党中央批判も展開されている。
孫氏は9月末、「党籍はく奪」処分を受けたが、これは現職の党中央委員としては30年ぶりのこと。やはり党政治局員で、重慶市トップだった薄熙来氏も2013年3月に孫氏同様、「重大な規律違反」で重慶市党委書記を解任されたが、党籍はく奪はその半年後であり、孫氏の2か月間という短期間での処分は極めて異例だ。
薄氏の場合、同年4月に党政治局員と党中央委員の職務を停止されたうえで、党籍はく奪の処分を受けている。それと比較すると、孫氏のように、現職の党中央委員の肩書を維持したうえでの党籍はく奪は見せしめ以外の何ものでもないことがわかる。
さらに、孫氏は直ちに司法機関に身柄を移送されるなど、党の25人のエリート集団である政治局員から一転して「被告」の身分にまで落とされるのは異例中の異例といえる。