定年退職までは、家族のため、会社のために働いてきたけど、リタイアしてからはどうしよう──そんな、「第2の人生」のスタート地点で、選択肢の一つとして出てくるのが、ボランティアだ。“これからは、社会のために”と一念発起し、「定年後ボランティア」で汗をかく老後を選んだ人に密着した。
埼玉県草加市に住む竹内忠雄さん(74)は、1962年、皇居や首相官邸の絨毯、国立劇場の緞帳などを手掛ける織物大手、住江織物に入社。東日本緞帳美術工芸部長を務めた後、2003年に退職。現在は地元の防犯対策に一役買う自警団「日本ガーディアン・エンジェルス」に所属している。
定年退職後に自宅で車を盗まれるまで、地域の治安の悪化に気付かなかったという。
「元同僚に埼玉の治安はどうなっているんだ、と話したら、『仕事にかまけて家や地域をほったらかしにしてきた俺たちが悪い』というんだ。ガツンと頭を叩かれたような気がして、遅まきながら、地域を守ろう、と思うようになった」
現在はガーディアン・エンジェルス草加支部に所属し、金曜と土曜の夜、2時間ほど地域を見回る。常に周囲を見渡しながら早足で歩き、すれ違う人に挨拶し、ゴミ拾いもする。違法看板の撤去やタバコのポイ捨て防止も活動の一環だ。
「駅のコンコースを自転車で走り抜ける人を注意すれば『うるせー』と逆切れされることもある。酔っ払いに声をかければ絡まれて、気持ちが萎えることも。
でも、パトロールは楽しみなんだ。街ゆく人たちと声を掛け合うのは楽しい。これまで仕事人間で、ほったらかしにした地域には申し訳ない気持ちがあるから」
これからも、地域の防犯を続けることで恩返しがしたい、という。
【団体DATA】NPO法人「日本ガーディアン・エンジェルス」:1979年、米・ニューヨークで発足した国際規模の防犯団体。1996年、日本支部設置。地域パトロールを中心とした活動を行なう。メンバーの平均年齢は50歳。
※週刊ポスト2017年10月13・20日号