「この紋所が目に入らぬか」の決めぜりふでおなじみ、国民的ドラマ『水戸黄門』が6年ぶりの復活。6代目水戸光圀を務める武田鉄矢(68才)は、この大役とどう向き合っているのか。“武田黄門”の裏側と本音に迫った。
午前7時半過ぎ。京都・太秦にある東映京都撮影所のメイク室には、かつらをつけ、ひげを生やし、おなじみの“ご老公”に変身する武田鉄矢の姿があった。
「日本で、最もポピュラーな老人。外国人に説明するときはそういうふうに言おうかな」
笑顔で話す武田は、10月4日から6年ぶりに始まった『水戸黄門』(BS-TBS)で、6代目水戸光圀を務める。『金八先生』シリーズ(TBS系)など、数々の代表作を持つ武田だが、1969年から50年近く続く国民的ドラマへの出演には、複雑な心情もあったという。
「まだ、あそこまで年取ってないぜ、という思いが一瞬ね(笑い)。役者というのは、自分の若さにしがみついているところがあるものですから。そうしたら、制作側の口説き方が上手で、“70才になってからの練習だと思ってやってくれませんか?”って。変な言い方だけど、黄門を目指して老けていくのもいいかなと腑に落ちたんです」
著書『アラ還とは面白きことと見つけたり』(小学館文庫)でも、“老い”にどう立ち向かうべきか、理想や考えを綴った武田。古希を前に、“老い”を探りながら演じているという“武田版水戸黄門”には、誰もがイメージする黄門さまの型を崩すことなく、さまざまな工夫やアイディアが盛り込まれている。
「ずるさや甘えという、老いの欠点を今回の黄門さまはわりと持っているんです。年がいもなくガバガバ飯を食った後にお腹を壊して、助さんに“おんぶしろ”とか言ってキレられたりね(笑い)。主張や決意には一本筋が通っているけれど、完璧ではない。そのあたりが、石坂(浩二)さんや里見(浩太朗)さんとは違って、ちょうどぼくにはピッタリきたんですね」
そうにこやかに語るが、“東映スタイル”と呼ばれるほど猛スピードで進む撮影は、ベテランの経験値をもってしてもハード。
2011年に大動脈弁狭窄閉鎖不全症の大手術を受けている武田の体調を支えるのは、妻の“作り置き愛妻弁当”だと言う。
「週末に東京へ帰った時、煮物や、ごぼうやトマトなどの野菜を2~3日分、密閉容器に詰めたものを母ちゃんに持たされるので、温めて食べています。ホテルに炊飯器を持ち込んでいるから、5分づきの玄米を炊いて。食事は母ちゃんの言うことを聞いて、ギリギリ自炊しています」
お酒はほんの少しだけ、21時半には就寝するという武田。妻の忠告は、黄門さまの印籠よりも威力絶大なようだ。
撮影/江森康之
※女性セブン2017年10月19日号