2013年以降、マンション市場では局地バブルと呼ばれる現象が起こった。東京の都心やその周縁、神奈川県の一部や京都市の御所周辺では、マンション価格が不自然に高騰したのだ。そして現在、上昇したマンションの価格が新築、中古ともに高止まりしている。
価格が上がった原因は、異次元金融緩和や相続税対策、外国人の爆買いであったので、市場が本来の需給関係での価格形成へと回帰すれば下落は必至かと思える。しかし、いったん熱くなった市場はなかなか冷めない。
こういう高止まりの時期は、「売り時」である。所有している住宅を高値で売却できる千載一遇のチャンスでもある。しかし、自分が住んでいるマイホームを売却してしまっては、住む場所が無くなってしまう。そういう時にどうすればいいのか?
まずは賃貸がよい。住まいは所有することが最善ではない。所有するということは、様々なリスクを背負うことでもある。
1.価格下落リスク
2.災害リスク
3.欠陥リスク
4.コミュニティリスク
ざっと考えただけでこれだけのリスクがある。これからの時代、住宅を所有していれば資産価値が低下する恐れが大きくなる。地震や水害にあうと大きな損失を被るかもしれない。せっかく購入した住宅には建築的な欠陥があるかもしれない。隣人たちとの人間関係のトラブルが生じるかもしれない。マンションだったら管理組合のトラブルに巻き込まれたり、生活習慣の違う外国人と共存するストレスの受容を強いられたりする可能性もある。
しかし、賃貸住宅であればこういうリスクに対しては「引越し」というリセット手段がある。ほとんどの問題は引越しで解消できるのである。
あるいは、暮らしていくうちに本人や家族の社会状況が大きく変化するかもしれない。サラリーマンであれば転勤や転職によって通勤先のロケーションが大きく変わる可能性がある。子どもが自宅から遠い私立名門校に合格するという嬉しいハプニングもあり得る。
そういう時に、持ち家だと動きが鈍くなる。「今の家をどうしよう」という迷いが、自分や家族の人生のチャンスを逃すことにつながるかもしれない。
その点、賃貸に住んでいると自由だ。自分や家族の都合に合わせて住まいを変えることができる。さらに言えば、今は住宅が余っている。賃貸住宅市場は全国的に「借り手市場」になっているのだ。
この傾向は人口が減少している中でなお、新築住宅が毎年100万戸前後建設されている現況が続く限り、変わることはないだろう。つまり、この先住宅の賃料というものは徐々に下落していくと考えてよいのだ。
だから今、持ち家を売って賃貸に移る、という住み替えは賢明かもしれない。特に、購入したマンションが値上がりをしていて、売却した場合には住宅ローンの残債を清算しても手元に何百万円かのお金が残る、という条件なら「賃貸に住み替え」という選択肢は大いにあり得る。そして、賃貸への住み替えはある意味で自由を得ることでもある。
ここでは賢明な賃貸への住み替えのテクニックや発想の転換をいくつかご紹介したい。