芸能

柳家喬太郎 三題噺でわかるケタ外れの創作力と応用力

柳家喬太郎の凄さとは

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の連載「落語の目利き」より、観客からお題を3つもらって即興で落語を作る「三題噺」に取り組んだ柳家喬太郎と、その創作力と応用力の高さについてお届けする。

 * * *
 才人、柳家喬太郎。彼の創作力はケタ外れだ。それは、単に優れた新作落語をたくさん生み出している、というだけではない。何か課題をクリアすることを求められたときの応用力の高さは驚異的である。

 その最たるものが、観客からお題を3つもらって即興で落語を作る「三題噺」。上野鈴本演芸場8月上席夜の部は企画興行「柳家喬太郎 三題噺地獄」で、10日間すべて前売り(指定席)で完売。連日立ち見が出た。

 5時半開演、喬太郎は毎晩6時に観客からお題をもらって楽屋に戻り、寄席の番組が進行する間に作った落語をトリの高座(8時20分から)で演じる。今回は3つのお題のほか、仲入り前に登場する日替わりゲストの演目も盛り込んで噺を作る、という縛りがあった。

 僕が観たのは4日目と5日目。4日のお題は「ギャル」「懐中時計」「ダムに沈んだ村」で、ゲスト三遊亭白鳥の演目は『アジアそば』。これらを盛り込んで喬太郎が作ったのは、19歳で結婚しようとする孫娘に祖母が自分の両親(孫娘にとっては曾祖父母)の人生を語って聞かせる『蕎麦と湖』。駆け落ちして懸命に生きた曾祖父母の物語をカットバックで挿入し、随所に笑いを盛り込みながら親子4代にわたる人情噺に仕立てた構成は、到底即興とは思えない。胸に沁みる逸品だ。

 5日のお題は「金太郎アメ」「手乗り文鳥」「カクテルグラス」で。ゲスト春風亭一之輔が演じたのは『かぼちゃや』。これで喬太郎は、純情中年のドタバタ恋物語『大吉文鳥』を創作した。恋する独身中年男の勘違い暴走のバカバカしさで爆笑させつつ、最後は胸キュンのエンディングへと持っていく。これぞ喬太郎の真骨頂! これも持ちネタとして残りそうだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

女性との間に重大トラブルを起こしていたことが判明した中居正広
「田原俊彦、植草克秀を収録済み」中居正広『だれかtoなかい』が早期打ち切り危機…空白埋める「毒舌フリーアナ」
NEWSポストセブン
新年一般参賀では、午前と午後合わせて5回、宮殿のベランダに立たれた(2025年1月、東京・千代田区。撮影/黒石あみ)
一筋縄ではいかない愛子さまの結婚問題 お相手候補に旧宮家の男系男子を推す声がある一方、天皇陛下が望まれるのは“自然に惹かれ合った形で”
女性セブン
2024年12月13日の事始め式では青いストールを巻いて現れた
《六代目山口組・司組長のファッションに注目集まる》原点は「チョイワル」コーディネート、海外高級ブランドを外商で取り寄せ、サングラスは複数用意して全身グッチ
NEWSポストセブン
巨人入団が決まった田中将大(時事通信)
巨人入りの田中将大は200勝達成できるか 平松政次氏「10勝できる」江本孟紀氏「申し訳ないけど3つ勝つのも大変」【2025年のプロ野球界を占う】
週刊ポスト
中居正広の女性トラブルに全く触れないテレビ局 
中居正広の深刻トラブルに全く触れないテレビ局 ジャニー氏性加害問題で反省したはずなのに…騒動が風化するのをじっと待つ“不誠実”
女性セブン
乗客乗員181人のうち179人が死亡するという韓国の旅客機事故で最大の被害となった
韓国機事故で179名が死亡、2人の生存者が座っていた“生還しやすい座席” 相対的には「前方より後方」「窓側より通路側」「非常口付近」
女性セブン
一生に一度の思い出の晴れ着になるはずだった(写真提供/イメージマート)
《「二十歳の集い」晴れ着トラブル》各地で発生していたヤンキー衣装を巡るトラブル「サイズが合わないピンク色の袴を強制」「刺繍入り特攻服を作らされた」
NEWSポストセブン
現在
《3児の母親となった小森純》「社会に触れていたい」専業主婦から経営者を選んだ意外な理由、タレント復帰説には「テレビは簡単に出られる世界じゃない」
NEWSポストセブン
サプライズでパフォーマンスを披露した松本(左)と稲葉(「NHK紅白歌合戦」の公式Xより)
B’z紅白初登場「7分54秒の奇跡」が起きるまでの舞台裏 「朝ドラ主題歌以外は好きな曲で」のオファーに“より多くの人が楽しめるように”と2人が選曲
女性セブン
女性との間に重大トラブルを起こしていたことが判明した中居正広
《スクープ続報》中居正広、深刻女性トラブルの余波 テレビ局が収録中止・新規オファー取りやめ、『だれかtoなかい』の代役にはSMAPメンバーが浮上
女性セブン
俳優
《第1子男児誕生の仁科克基》「僕は無精子症でした…」明かした男性不妊の苦悩、“心も体も痛い”夫婦で乗り越えた「妊娠18カ月生活」
NEWSポストセブン
「海老名きょうだい3人死亡事件」の犯行現場となった一家の自宅
《海老名きょうだい3人死亡事件》子煩悩だった母が逮捕 残された父が重い口を開いた「妻は追い詰められたんだと思います」「助けられなかった」…後悔の念
女性セブン