スマホ普及率が7割に達し、デジタル化した現代社会。そんな時代に“逆行”する、新ジャンルの「脱デジ」マンガが話題になっている。大ヒットした『花のズボラ飯』で知られる水沢悦子氏の最新作『もしもし、てるみです。』だ。
『週刊ビッグコミックスピリッツ』で連載中のこの物語の主人公は、「ネットが大嫌い」な女性・てるみさん。スマホが当たり前の世界で、ネットにも繋がらず、写真も撮れないアナログケータイの販売会社「もしもし堂」に勤めている。さながら、スマホに対抗した“黒電話専門会社”の社員といったところ。作品はそんなてるみさんに恋をし、「脱デジ」を決意した男子中学生・鈴太郎との“テレフォン・ラブ・コメディ”だ。
しかし、単なる大人のお姉さんとの恋物語では終わらない。この世界のスマホ「ミライフォン」を手放したことで、鈴太郎はSNSや掲示板といったネット社会から解き放たれる。放課後に毎日「もしもし堂」に通い、てるみさんと緊張しながらも直接言葉を交わすことで、デジタルにはない「つながり」を感じるようになる──というストーリーだ。
まさに「脱デジ」生活を描くこの作品の魅力はどこにあるのか。愛読者だという評論家の荻上チキ氏が語る。
「このマンガは単にデジタルを批判しているのではなく、ネットからのストレスフリーを描くことで生活時間を見つめ直す点が面白い。『ネットはダメだ』とスローライフを提唱するわけではなく、むしろそれぞれの世俗的な生き方を描いているのもほっこりします」
作中でも、鈴太郎の同級生たちはツイッターやLINEを連想させる「トモッター」や「ニャイン」などのコミュニケーションツールを使って生活している。なぜ、デジタル化が進む時代にあえて「脱デジ」をテーマにしたのか。著者の水沢氏がこう語る。