「ナマの日本美術を観に行こう」と始まった“大人の修学旅行”シリーズ。今回は平安から鎌倉時代にかけて活躍した天才仏師・運慶が造り上げた仏像を中心に、父の康慶、息子の湛慶、康弁ら親子3代にわたる代表作を紹介する話題の特別展「運慶」(東京国立博物館・平成館。11月26日まで)を訪れた。圧倒的な迫力で心に響く傑作の数々を、日本美術応援団長で明治学院大学教授の山下裕二氏と画家の山口晃氏はどう見たのか。
山下:平安時代の末期から鎌倉時代にかけて活躍した天才仏師・運慶(生年不詳~1223年)は、生涯を通して多くの仏像を造ったと思われます。現存する中で運慶作、もしくはその可能性が高いとされる仏像は、31体あると考えられています。今回の運慶展には、過去最多の22体が結集、史上最大規模となり、運慶の傑作を間近で拝めるまたとない好機です。
山口:父・康慶から運慶、そして運慶の息子の湛慶、康弁へと、親子3世代の作品から系譜を辿ることができるのも大きな魅力ですね。康慶と運慶の初期の作品を集めた第1章では、国宝指定の大日如来坐像にまず目を奪われます。
山下:運慶のデビュー作として知られていて、奈良の円成寺にあります。イケメンですよねぇ。かつて漫画家の柴門ふみさんと仏像の対談をした時に、彼女はこの像が一番好きだと言っていた。若々しい感じがして僕もすごく好きです。不謹慎かもしれないけれど、金箔が所々剥げつつも、涙の筋のように瞼から頬に残っているのがいい。
山口:耳のように本来は全面に金箔が施されていたのですね。これだけまだらになっても顔の造形が浮いている。よほどしっかり彫らないと、造形は消えてしまうものだと思います。正面と横側では印象も変わります。横顔の鼻梁の下がり方が滑らかで、すごく日本人らしい。仏教美術発祥の地とされる中国西域の表現ではもっと鼻梁がスコーンと通っています。