日本でワイン造りが始まって今年で140年。国産ブドウ100%の日本ワインや後述するナチュラルワインの人気も相まって、2015年のワイン消費量は過去最高の37万トンを突破、第7次ワインブームといわれている。
今や日本の食文化に欠かせないワインの世界に、40年前に飛び込み、“日本一のワインの目利き”と呼ばれる人物がいる。東京・六本木の老舗ワインバー「祥瑞(しょんずい)」のオーナーにしてワイン商の勝山晋作(62)である。
勝山のワインとの出会いは、大学卒業後に入社した東京・広尾の「ナショナル麻布スーパーマーケット」だった。
「配属されたのは酒類販売部でした。近くにドイツやフランスの大使館があって、外国人客が多かった。週末ともなれば8割近くが外国人でしたから、日本人客の中には『ここは治外法権? パスポートいるんですか?』と聞く人もいたくらいです(笑い)」(勝山氏)
店の客はワインを飲み慣れている外国人が多く、彼らに安くて美味しいワインを売ることが勝山の仕事のひとつだった。
だが、当時の勝山はワインについて何も知らなかった。そこで、イギリス人の書いた分厚いワインの専門書を辞書片手に原書で読み、1冊丸暗記するなど、文字通り“ワイン漬け”の日々を送ることになった。
その甲斐あって「ワインのことは勝山に聞け」と評判になり、注文が殺到。ほどなくして企業からも声がかかるようになり、億単位の商談を次々と決めていった。