3日間で約1万5000人が駆け付けた、東京ビッグサイトで開催された第30回国際メガネ展(10月11~13日)。広い会場には世界中から集められた、最新のアイウエアがズラリと展示されていた。そのなかでシニア世代の注目を集めていたのが「老眼鏡」だ。専門の売り場なども設けられており、関心の高さがうかがえた。
2016年の国内メガネ市場は5087億円(矢野経済研究所)。そのうち老眼鏡は3531億円と全体の70%を占めている。
年を重ねれば誰もが直面する目の悩み「老眼」。そもそも老眼とは何なのか。スマイル眼科クリニックの岡野敬院長が解説する。
「人間の目はカメラのレンズの役割を果たしている水晶体を毛様体筋という筋肉で引っ張ることでピントを調節しています。しかし、加齢による毛様体筋の衰えによって、その調節能力が弱まり、ピントを合わせづらくなる状態を老眼と呼びます。一般的に老眼は『近くが見えない』というのが代表的な症状ですが、その他にも、手元から遠くへ視線を移した際に『はっきり見えるまで時間がかかる』なども老眼の症状といえます」
その調節能力の低下は早ければ20代から始まり、40代から自覚症状が表れ、50代でほとんどの人が老眼を自覚する。しかも一度老眼が始まれば治ることはない。その対応として有効なのが老眼鏡なのである。だが、需要が多い半面、老眼鏡に対するイメージはいまだにネガティブなものが少なくない。
「老眼鏡をかけると、さらに目が悪くなるのではないか」
「デザインが古臭く、野暮ったくてダサい」
しかし、そのような思い込みこそが「老眼を悪化させる」と指摘するのは、前出の岡野院長である。
「『老眼鏡をかけることで老眼が進行する』ということはあり得ません。老眼鏡をかけ始める時期が、老眼が進行する時期と重なるだけ。我慢して裸眼で見ようとすれば、眼精疲労から、目の奥が痛んだり、ドライアイになったりとさまざまな問題が生じて、さらに目の状態を悪化させる可能性もある」
100円ショップや格安メガネ店で販売されている安い既製品は確かにデザイン性に劣るものも多い。メガネライターの伊藤美玲さんが語る。
「視力は左右の目で同じとは限りません。しかし、既製品だと左右同じ度数の場合が多い。度が合わないメガネをかければ、当然目は疲れやすくなる。既製品ではなく『自分に合った老眼鏡』を作ることが理想です。近年は累進屈折力レンズの進歩が目覚ましく、普通のメガネと変わらないデザインでおしゃれな老眼鏡が手軽に作れるようになっています」
※女性セブン2017年11月2日号