【著者に訊け】益田ミリさん/『美しいものを見に行くツアーひとり参加』/幻冬舎/1404円
【本の内容】
41才で行った「北欧オーロラの旅」を皮切りに、5つのツアー旅行がエッセイと写真、イラストで紹介されている。ツアーの良さは、「親に見守られている子供のように自由になれること」。困ったことがあればガイドさんがいる。その心強さが海外での不安を減らしてくれるのだ。ひとり参加は「ちょっとおしゃべり、8割ひとり」という他の参加者との淡い関係性の居心地の良さも伝わってくる。「機内に持ち込むもの」など実用情報も満載で、旅に出たくなること請け合い――。
ツアーとは、2人ないし数人で参加するものだと思っている人は多いはず。「行きたい!」と思った場所のツアーにひとりで参加してみた益田さんの旅行記を読むと、ツアーはひとり旅にこそ向いているのでは、という気がしてくる。
「私自身、若い時に友達と参加したツアー旅行では、ひとりの方がいらしたとしても見えてなかったです。今回、自分がひとりで参加してみると、結構、おひとりの方っていらっしゃるんです」
とはいえ、グループ客の中にひとりで参加するには大変なこともあるだろう。
「いちばんの問題は寂しい人だと見られないかってこと(笑い)。人って、こんなにも誰かに寂しいと思われたくない生きものなんですね。他の参加者が不安にならないよう、『友達が急に来られなくなって』とか、最初のうちはちょっとした小芝居をしたりしました」
ひとり参加に慣れると、期間限定でつかず離れずの人間関係は非常に過ごしやすかったそうだ。
北欧のオーロラ。ドイツのクリスマスマーケット。世界遺産のモンサンミッシェル。ブラジル・リオのカーニバル。台湾の平渓天燈祭(ピンシーテンダンサイ)。旅先には、ひとりではなかなか行けなさそうな場所ばかり選ばれている。
「40才になったとき、この10年かけて、何かしなきゃいけないんじゃないかって急き立てられるように思ったんです。綺麗なものが見たい気持ちがどんどん強くなっていって、どんな形で発表するかはわからなかったんですけど行くたびに長めのエッセイを書いておくようにしました」
旅に出ようと決めると、自転車で旅行代理店に出向き、行き先から3つほど候補を出してもらった中から30分ほどで選ぶそう。
「すごく短い時間で行けちゃう。ひとりでもツアーに行けることがわかると、『ナスカの地上絵』もキューバも、一生行けないと思っていた場所にももしかすると行けるかもしれない、って世界が広がる感じがします」
買ったものはその日のうちに写真を撮る、旅先から自分あてにハガキを出す、など記録の取り方も実に具体的で、旅心を誘う。
■取材・文/佐久間文子
※女性セブン2017年11月2日号