コンクリートの壁面いっぱいに切り込まれた十字架状の窓から、薄暗い聖堂内に柔らかな自然光が浮かび上がる──建築家・安藤忠雄(76)の代表作のひとつ、「光の教会」だ。
生まれ育った大阪で1969年に安藤忠雄建築研究所を設立してから半世紀。1995年には建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を受賞し、世界の“ANDO”となった今も大阪を拠点に活動する。
取材中も、幾度となく「私ひとりではない。それぞれの能力を発揮してチームで仕事をしている」と口にするのが印象的だった。事務所に飾られた所員全員と並ぶ写真はその象徴だ。
「25人のメンバーで国内20件、海外35件の建築プロジェクトを進行中です。皆でやるからこそ、この人数でも前に進む。
残念ながら私が育った時代と違い、今の日本には組織がありません。人と人との繋がりが希薄になっているけれど、ここにしかいない個人が集まって、ここにしかないチームや作品が生まれるからこそ、面白い社会になるのだと思う」
事務所の隣に建つアネックス棟に、安藤は私たちを快く案内してくれた。作業場に入ると巨大な模型から大学生が顔を上げる。席を外そうとする彼らに安藤は、「ここにいていいよ」と声をかけた。