多くの人に愛されている猫は、絵本の分野でも圧倒的な人気を誇っている。中でも今、子供はもちろん大人もハマっているのが『ノラネコぐんだん』(白泉社)だ。ノラネコたちの奇想天外な悪だくみを描く物語と、スピード感のあるかわいいイラストで、シリーズ累計70万部を突破するベストセラーになり、関連商品まで発売されている。著者・工藤ノリコさんにヒットの理由を聞いた。
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実はこのノラネコたちは私が昔、就職情報誌に描いていた4コマ漫画『がんばれ!ワンワンちゃん』のいち登場人物だったんです。スタートしたのはもう20年近く前ですが、主人公が真面目でがんばる犬だったので、それを翻弄するようなノラネコの集団を考えたのが最初でした。その頃の軍団は、もっとひどい悪さをしていて、数も今よりもっと多かったんですよ。
それを新しい絵本を作るにあたって、悪さをするノラネコを主人公にしたんです。最初が「パンこうじょう」、続いて「きしゃぽっぽ」、「おすしやさん」、「そらをとぶ」と来て、11月に発売する新刊では「アイスのくに」を舞台にしています。毎回、「ドッカーーン!!」という爆発を楽しみにしてくださっているかたが多いので、爆発して楽しい場所を考えて作っています。
現在は、半年に1回新作を発売しています。いちばん時間がかかるのは下描きです。下描きを書いてから本番用紙にトレースして色を塗るんですが、ノラネコたちの形とか表情とか、8匹いるので、とても時間がかかるんです。
ちょっとした表情を、その状況にふさわしいものにしたいと思っているんですが、何度やってもうまく行かない時がある。「あ、やっちゃった」とか「あれっ」と思っている顔とか、悪だくみがバレて正座をしている時の、お説教を神妙に聞いてはいるけど反省はしていないような微妙な空気感の中にいてほしいときの表情が特に難しいですね。
ノラネコぐんだんは8匹もいるので、1匹ずつ名前がないんですか?と聞かれることもありますが、名前はないんです。私の中では、彼らは集団で存在しているというイメージ。
リアルな人間社会の地続きにして、現実味を盛り込みたくないんですね。あくまでも集団で動いて面白いことが起きるという物語を考えています。それがちゃんと起承転結で描けていることが、たくさんのかたに読んでもらえている理由じゃないかと思っています。
というのも、私自身、小さな頃からたくさん絵本を読んできましたが、子供の時に読んでいた『ひとまねこざる』が今でも好きでよく読んでいます。それは主人公がかわいいというだけでなく、何よりお話が面白いからです。
今、実はノラネコぐんだんが出てくる文字を中心とした読み物を作っています。絵本を読んでいたちびっ子たちを、児童書に橋渡しするような本にしたいと思っていて、出来上がりがとても楽しみなんです。
※女性セブン2017年11月2日号