今、手芸好きの間で人気沸騰中の“動物のぽんぽん”。これは、ニット帽の上についている丸いぽんぽんが、動物の形になったようなもの。基本の作り方は、フォークや専門のぽんぽん用具に毛糸をぐるぐる巻いて、作りたい動物の形にカットして目鼻口のパーツをつければ出来上がり。…のはずだが、猫、それも飼い猫に似せて作ろうとすると一筋縄では行かないらしい。
クラフト作家の伊藤和子さんは初めての書籍『ぽんぽんでつくるどうぶつとモチーフ』(日本文芸社)の制作にあたり、20種近くの動物のぽんぽんを作った。その中で最も苦労したのが猫だった、と打ち明ける。
「実は猫を飼ったことがないので、最初は猫の写真を見ながら試作を作ったのですが、出来上がりはイメージと全然違う。そこでペットショップに行き猫を観察してみると、思っていたより頬がシャープで、熊のように丸い輪郭を作ると実物からかけ離れてしまうことがわかりました。
ほかにも、口から鼻にかけて膨らんでいる『マズル』など、猫ならではの立体的な特徴が幾つかあり、そこをつかまなければリアルな猫は作れないと、気づいたんです」
もっとも時間がかかったのは、目を入れる作業だった。
「目も顔の上にポンとのせればいいわけでなく、肌表面から目を奥に入れ込みます。この目の縁の厚さを何ミリにするかで、印象が大きく変わるんです。上目遣いにするなら角度も微調整が必要に。ここが制作の山場でした」
何度もペットショップに足を運んでは試作を重ね、2週間かけてようやく完成。
「宝石のような目といいツヤツヤした毛並みといい、猫がこんなに美しい生き物だったとは知りませんでした」
と溜息をつく伊藤さん。一般的な制作日数は、「顔だけで2~3時間。胴体もつけると5時間。こだわりだすとさらにかかる」と言うが、愛猫を思い浮かべながらの作業は至福だろう。秋の夜長にぜひ。
※女性セブン2017年11月2日号