マツダは10月25日に報道陣向け公開が始まる東京モーターショーに、新しい高効率エンジン「SKYACTIV(スカイアクティブ)-X」と新規開発の車体、シャシーからなる次世代コンパクトモデルのコンセプトカーを出品するという。
次期「アクセラ」とみられるこのモデルについて、マツダは2019年発売というスケジュールを立てているが、開発はかなり進んでおり、現行アクセラのボディシェルをまとった試作車でテストを重ねている。
その試作車を山口のマツダ美祢自動車試験場でテストドライブする機会があったという自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が、進化を続けるマツダ車の高いポテンシャルについて体感レポートする。
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「スカイアクティブ-X」はマツダが今年8月に技術発表を行ったものの実機。燃料はガソリンだが、燃焼はプラグ点火ではなく、ディーゼルのように圧縮で発生する熱で行うという、自己着火型(CCI)エンジンだ。
CCIはガソリンエンジンの熱効率を飛躍的に向上させる技術として世界の自動車メーカーが開発を進めているものだが、燃焼制御があまりにも難しく、実用化のめどが立っていない。
そのなかでマツダのエンジニアは、シリンダーの圧縮ですべてをコントロールするのではなく、普通のエンジンと同じように点火プラグを設置。その周辺の爆圧を利用してシリンダー内の圧力を調節する、SPCCI(スパークプラグ自己着火)という奇策を思いつき、一気に実用化に漕ぎつけた。
ガソリンエンジンの熱効率(投入した燃料のエネルギーに対して動力として取り出せる分の割合)は長期的には50%に向かうというのが自動車業界の技術展望。スカイアクティブ-Xの熱効率は40%を超える見通しであるものの、50%には遠く及ばない。が、その長期目標の実現に向けた重要なマイルストーンになるのは確かだろう。
マツダのエンジニアは「ピーク熱効率もさることながら、熱効率の良い範囲の広さは今までのエンジンとは桁違い。運転パターンによらず好燃費で走れるようになる」と自信を示した。
だが、点火プラグを使った小さな燃焼でシリンダー内全体の圧力を精密に制御することなどできるのだろうか。実際のテストドライブではその点に留意し、限られた時間のなかでスロットルの踏み込み量を急に、あるいはじんわりと変えたりと、いろいろな運転パターンを試してみた。
結論から言えば、市販車デビューの予定時期まで2年ほどがある現時点で、大きな弱点はすでにほとんど見られないくらいの域に達していた。急に大トルクを発生させてもカリッというノッキング音ひとつ出さなかった。
現在残っている欠点は、定速クルーズから緩い加速に移るさい、わずかに息つき感があることくらいだが、2年もあればそれは解消させることができるだろう。
過給器つき2リットル直列4気筒というこのエンジンの予定スペックは最高出力190馬力、最大トルク230Nm(23.4kgm)とのこと。それだけのパワーが出せているかどうかを実際にチェックできる走行環境ではなかったが、排気量2.5リットルの自然吸気エンジン並みのゆとりはあるように感じられた。