「こんなはずではなかった」──介護事業者の倒産が全国各地で相次いでいる。入念に下見をし、信頼できそうなスタッフに出会い、残しておいた蓄えを取り崩して、ようやく入居にこぎつけた“終の棲家”。その経営が破綻したら、果たしてどんなことが起きるのか。
「80代の父に入ってもらう老人ホームを選んだときは、専門の相談員にも話を聞きましたし、慎重に選んだつもりでした。介護や生活支援のサービスが他よりも充実していたのが決め手になりました。
なのに、入所から2年経った今年の夏、『破産します』という知らせが運営する法人の経営本部からあったんです。寝耳に水で、頭が真っ白になりました」
父親の入居する老人ホームの異変に、全く気付いていなかった高橋恭二氏(仮名)はそう振り返った。
介護業界では、近年、倒産や休廃業が急増している。東京商工リサーチによれば、2016年には老人福祉・介護事業の倒産件数は108件にのぼり、過去最多を更新した。倒産の原因には、介護報酬のマイナス改定や、資金調達力に劣る新規事業者の参入などが挙げられている。倒産の業種では訪問介護がもっとも多いが、有料老人ホームも例外ではない。
今年7月14日には、札幌市を中心にグループホームや有料老人ホームなど23施設(居室数1600以上)を運営していた介護事業者「ほくおうサービス」(札幌)などグループ5社が、札幌地裁へ自己破産を申請した。
連結の負債総額は約43億3000万円にのぼる。道内では最大規模を誇った事業者だけに、入居者やその家族はもちろん、業界全体に大きな衝撃が走った。