日本シリーズで奮戦中のソフトバンクと、Bクラスでシーズンを終えた巨人。同じように補強資金が潤沢だが、その差は育成力、戦術など様々にあげられる。そして、監督の統率力にも違いがあるという指摘は少なくない。SB工藤公康監督はファームから上がってきた若手にチャンスを与える一方で、ケガの場合を除いて4番・内川聖一など柱となる選手を滅多に動かさない。
「CSでは松田宣浩が不調でも決してスタメンから外さなかった。チーム最多勝の東浜巨もローテーションを任せたことで大化けした。だから中心選手に自覚が生まれる。一方、巨人のように4番を阿部慎之介、マギー、村田修一とコロコロ変えてばかりでは皆が“自分の生き残り”を最優先に考えるようになる。一体感が生まれるはずはない」(ホークス番記者)
パ・リーグの試合中継の解説を多く務める野球評論家・山崎裕之氏が語る。
「ソフトバンクの選手はサインが出てなくても進塁打を狙おうとか、凡打でも一塁へ全力疾走する姿勢が見える。また1試合目で失敗しても、2戦目、3戦目に生かそうとする。だから3連戦での負け越しが少ない。選手が“勝つために何をすればいいか”を考え、大人の野球をやっているのです。
セ・リーグがDH制導入を検討しているというが、本質的な問題はそこではない。“当たり前の育成・コーチング”をしてきたかどうかの蓄積が大きな差になっている現実を巨人は受け取めるべきでしょう」
戦力が足りなければファームから探してくるソフトバンクと、「よそから連れてくる」巨人では、選手のモチベーションや責任感がまるで違ってくるのは当然だ。「カネを注ぎ込む」より前に重要なのは意識改革だろう。
※週刊ポスト2017年11月10日号