日本経済を「デフレ逆戻り」の道から方向転換させ、成長路線に乗せるには、2019年10月に予定されている消費税10%引き上げの「再々々延期」が必要だ。
国民の多くは、はっきり増税を公約して選挙で国民の信任を受けた安倍晋三・首相が、いまさら増税を撤回するとは想像もしていないだろう。が、経済評論家の上念司氏は、その可能性は十分あると見る。
「消費増税の怖さを身にしみてわかっている安倍首相は本音では増税はしたくないし、できれば“凍結”してしまいたいと考えている。しかし、それを言い出せなかった。
法律で決まっている増税を延期や凍結するには法改正が必要です。過去2回の増税延期の時は“安倍一強”の力があったから財務省や党内の増税推進派をねじ伏せることができたが、支持率低下で安倍さんにはかつてほどの力がなくなり、今回の総選挙では増税推進派に配慮して『予定通り消費税を引上げて税収の使途を変える』と言わざるを得なかった」
それが選挙大勝で状況が変わった。
「国政選挙5連勝で再び求心力を取り戻した安倍首相は、消費税凍結を言える力を取り戻した。消費税を本当に引き上げれば、景気は急激に悪化し、国民の不満が高まって今度こそ安倍政権は終わりに向かう。
そのため、2019年夏の参院選で『やはり五輪前に景気の腰を折るわけにはいかない』とやりたかった増税凍結を掲げて戦う可能性があります。ただし、それでは遅い。実施まではまだ2年あるとはいえ、景気を考えればできるだけ早く凍結を宣言すべきです」(同前)
安倍首相が「増税」を公約して選挙に勝ったことで、逆に本来やりたかった「増税凍結」をする力を得たという見方である。
※週刊ポスト2017年11月10日号