同じように補強資金が潤沢なのに、ソフトバンクは史上最強、巨人は史上最弱と言われている。生え抜き選手の活躍の差をみると、育成力の差は歴然としており、2チームの違いをそこへ求める意見も多い。プロ野球のデータ分析を専門とするジャーナリスト・広尾晃氏の協力のもと調査すると、ソフトバンクの周到さは戦術にも現われている。
今季は1点差ゲームに特に強さを見せた。戦績は27勝15敗で、勝率.642。一方の巨人が13勝27敗で勝率.325であることを見ても、その「取りこぼしの少なさ」は際立っている。
絶対的なクローザー・サファテの存在も大きいが、それだけではないようだ。ホークス番記者は「IT技術を駆使した情報力」を理由に挙げる。
「ソフトバンクでは全選手と全コーチにiPhoneとiPadが支給されている。他球団の試合映像はもちろん、ヤフオクドームに配置された十数台のカメラ映像が試合1時間後に確認できる。また、『トラックマン』という最新機器も導入されており、打球の回転数や飛距離、飛び出し角などが瞬時に解析できるようになっている。相手投手の配球パターンを研究したり、自分のフォームの修正に役立てるなどチーム全体で情報を活用しているのです」(同前)
その分析力は、クライマックスシリーズ(CS)のファイナルステージでも発揮された。
ソフトバンクの2連敗で尻に火が付いた第3戦(10月20日)、7番・中村晃が同点の8回、値千金の決勝2ランを放つ。翌4戦目では、4番・内川聖一と5番・中村の連続アーチが試合を決めた。
「この3発はいずれも早いカウントからストレートを狙い打ちしたもの。相手投手の配球と試合展開を元に、ベンチから“直球狙い”の指示が出ていたと聞いている。選手たちもデータを読み込んでいるから迷いなく振り抜けた」(同前)
※週刊ポスト2017年11月10日号