高齢化社会のいま、介護業界では近年、倒産や休廃業が急増している。東京商工リサーチによれば、2016年には老人福祉・介護事業の倒産件数は108件にのぼり、過去最多を更新した。
倒産の原因には、介護報酬のマイナス改定や、資金調達力に劣る新規事業者の参入などが挙げられている。倒産の業種では訪問介護がもっとも多いが、有料老人ホームも例外ではない。
今年7月14日には、札幌市を中心にグループホームや有料老人ホームなど23施設(居室数1600以上)を運営していた介護事業者「ほくおうサービス」(札幌)などグループ5社が、札幌地裁へ自己破産を申請した。その後、入居者は別の施設に移らざるを得なくなり、受け入れ側にも混乱が生じた。入居していたホームが倒産すると、金銭的な“損害”を被ることもある。
倒産によって退去を余儀なくされた場合、施設に入る時に「家賃の前払い」という位置づけで支払った入居一時金の未償却部分については、入居者に返還されなければならない。ところが、それが戻ってこないことがあるのだ。
本来、2006年4月以降に開設された老人ホームでは、倒産などに備え、入居一時金の保全措置が義務付けられている。大手の介護事業者の場合、金融機関が保全金額に相当する額を連帯保証し、中小の場合は公益法人全国有料老人ホーム協会の入居者生活保証制度を利用することが多い。
ところが、この保全措置に漏れがあるという。父親の入居する老人ホームが倒産してしまったという高橋恭二氏(仮名)がいう。