E型肝炎ウイルスの感染者数は、年間約15万人と推計されているが、そのほとんどは症状が出ない不顕性(ふけんせい)感染だ。2011年10月にE型肝炎の抗体検査が保険承認され、それまで原因不明とされていた肝炎患者に、E型肝炎が見つかるようになり、発症の報告事例が急増している。国立感染症研究所の調査では、今年10月1日までのE型肝炎報告数の累計が243例となり、A型肝炎の220例を2年連続で上回った。実際の感染患者は報告例の数倍以上になるのでは、と考えられている。
自治医科大学医学部感染・免疫学講座ウイルス学部門の岡本宏明主任教授に聞いた。
「約15万人の感染者のうち、E型肝炎ウイルスと特定されず、原因不明の肝炎として見逃されている症例がかなりあると思われます。感染原因の多くは豚肉や豚レバー、イノシシなどの生食による経口感染です。2015年6月に豚肉や豚レバーの生食が禁止されましたが、それ以降も増加しています。検査が保険承認されたことと、加熱不十分な肉・内臓の摂食が依然として続いていることも影響していると考えられます」
経口感染以外にも、過去23例で輸血によるE型肝炎ウイルス感染が報告された。輸血血液のスクリーニング検査は、肝炎ウイルスではB型とC型が全国で行なわれている。北海道では2005年からE型肝炎ウイルス検査も試験的に行なわれており、最近では2326人に1人の割合で陽性が見つかっている。去年、日本赤十字社が東京地域の献血者を対象にE型の検査を実施、実に1367人に1人の割合で陽性が見つかった。
E型肝炎ウイルスは、感染してもほとんどが発症しないか、発症しても治療すれば完治するといわれてきた。しかし、中には劇症化や慢性化する患者がいる。主な原因は、E型肝炎ウイルスの遺伝子型と免疫状態だ。