国内

東芝の苦境 経営陣の判断ミスや権力闘争による「人災」か

リーマン・ショック後に東芝の社風にも変化が

 バブル経済崩壊後から停滞し続けた日本経済は2008年にはリーマン・ショックで一気に低迷する。現在経営再建中の東芝の不正会計が始まったのは、この頃である。経済ジャーナリストの磯山友幸氏はこう話す。

「リーマン・ショックが起きて大変な時期、経営陣は『何が何でも利益を上げろ』と社員に“チャレンジ”を迫りました。絶対に目標を達成しろというプレッシャーが強くなるにつれて、社内に不正やごまかしを許す雰囲気が蔓延した。当時を知る多くの社員が、『家庭的でほのぼのとしていたムードがこの頃、殺伐としたものに変わった』と証言しています」

 当時のトップは頭ごなしに部下を怒鳴りつけ、「死ね」「ここから飛び降りろ」などの罵詈雑言を浴びせたといわれている。利益第一主義のもと、「人を大切にします」という東芝の経営理念は、いつしか隅に追いやられていた。

 当時の東芝は原子力事業の失敗で巨額の赤字を抱えていた。そんな状況でもトップたちは社員や株主の生活を顧みず、エゴむき出しの権力闘争に明け暮れた。

 典型的な例が2013年2月に行われた当時の佐々木則夫社長の退任会見だ。席上、会見に同席した当時、会長だった西田厚聰氏は、「(新社長の田中久雄氏には)もう一度、東芝を成長軌道に乗せてほしい」と暗に佐々木氏を批判した。すると佐々木氏は、「成長軌道に乗せる私の役割は果たした」と応戦したのだ。『東芝崩壊 19万人の巨艦企業を沈めた真犯人』(宝島社)の著者・松崎隆司氏が指摘する。

「社長の交代会見というのは新社長の内定者を紹介するためのめでたい席なのですが、登壇した会長と社長が真っ向から言い合うなんて前代未聞です。それほど西田さんと佐々木さんの確執は根深く、東芝が抱えるさまざまな問題の火種になりました。その西田さんを重用し、長らくキングメーカーとして影響力を行使した西室泰三さん(※1996~2000年に社長を務めた)もまた、罪深い。現在、東芝が陥っている苦境は経営陣による判断ミスや権力闘争が重なって起きた『人災』といえます」

 東芝に限らず、近年はかつて盤石とされた大企業が苦境に陥るケースが続出する。なかでも東日本大震災時、福島第一原発で発生した大規模な事故により、信用が地に墜ちた東京電力について、松崎氏は「東芝と同じ穴のムジナ」と言う。

「双方とも国頼みで『親方日の丸』という発想が非常に強い大企業です。東芝の問題を大きくしたのは主に重電事業や原発など国と深くかかわる事業を担う人たち。『何かあったら国が何とかしてくれる』という甘えがあります。甘い災害予測を繰り返したうえ、事故後の対応が杜撰だった東電も同じ穴のムジナです。そうした人たちが無責任に起こした人災により、現場の社員やその家族が犠牲を強いられているのです」

※女性セブン2017年11月16日号

関連記事

トピックス

『激レアさんを連れてきた。』に出演するオードリー・若林正恭と弘中綾香アナウンサー
「絶対にネタ切れしない」「地上波に流せない人もいる」『激レアさんを連れてきた。』演出・舟橋政宏が明かす「番組を面白くする“唯一の心構え”」【連載・てれびのスキマ「テレビの冒険者たち」】
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平が帰宅直後にSNS投稿》真美子さんが「ゆったりニットの部屋着」に込めた“こだわり”と、義母のサポートを受ける“三世代子育て”の居心地
NEWSポストセブン
現場には規制線がはられ、物々しい雰囲気だった
《中野区・刃物切りつけ》「ウワーーーーー!!」「殺される、許して!」“ヒゲ面の上裸男”が女性に馬乗りで……近隣住民が目撃した“恐怖の一幕”
NEWSポストセブン
シンガポールの元人気俳優が性被害を与えたとして逮捕された(Instagram/画像はイメージです)
避妊具拒否、ビール持参で、体調不良の15歳少女を襲った…シンガポール元トップ俳優(35)に実刑判決、母親は「初めての相手は、本当に彼女を愛してくれる人であるべきだった」
NEWSポストセブン
「ミスタープロ野球」として広く国民に親しまれた長嶋茂雄さん(時事通信フォト)
《“ミスター”長嶋茂雄さん逝去》次女・三奈が小走りで…看病で見せていた“父娘の絆”「楽しそうにしている父を見るのが私はすごくうれしくて」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ犯から殺人犯に》「生きてたら、こっちの主張もせんと」八田與一容疑者の祖父が明かしていた”事件当日の様子”「コロナ後遺症でうまく動けず…」
NEWSポストセブン
「グラディアトル法律事務所」の代表弁護士・若林翔氏
【改正風営法、施行へ】ホストクラブ、キャバクラなどナイトビジネス経営者に衝撃 新宿に拠点を持つ「歌舞伎町弁護士」が「風俗営業」のポイントを解説
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
「本人にとって大事な時期だから…」中居正広氏の実兄が明かした“愛する弟との現在のやりとり”《フジテレビ問題で反撃》
NEWSポストセブン
長嶋茂雄・巨人軍終身名誉監督からのメッセージ(時事通信フォト)
《長嶋茂雄さんが89歳で逝去》20年に及んだ壮絶リハビリ生活、亡き妻との出会いの場で聖火ランナーを務め「最高の人生」に
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
「兄として、あれが本当にあったことだとは思えない」中居正広氏の“捨て身の反撃”に実兄が抱く「想い」と、“雲隠れ状態”の中居氏を繋ぐ「家族の絆」
NEWSポストセブン
今年3月、日本支社を設立していたカニエ・ウェスト(時事通信フォト)
《カニエ・ウェストが日本支社を設立していた》妻の“ほぼ丸出し”スペイン観光に地元住人が恐怖…来日時に“ギリギリ”を攻める可能性
NEWSポストセブン
現在、闘病中の西川史子(写真は2009年)
《「ありがとう」を最後に途絶えたLINE》脳出血でリハビリ中の西川史子、クリニックの同僚が明かした当時の様子「以前のような感じでは…」前を向く静かな暮らし
NEWSポストセブン