元NMB48の須藤凜々花と、矢口真里。この二人に共通するのは恋愛スキャンダルの主役となったアイドルという点だ。須藤は今年の「第9回AKB48選抜総選挙」で、20位にランクインした壇上スピーチで結婚宣言し大騒動となった。矢口といえば小栗旬との恋愛スキャンダルでモーニング娘。を卒業、結婚後の不倫騒動で活動を自粛していた時期がある。その矢口が司会をするインターネットテレビAbema TVの番組に、須藤がゲストとして招かれた。イラストレーター、コラムニストのヨシムラヒロム氏が、一世代違うアイドル・矢口によって引き出された須藤のアイドルらしさについて考えた。
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パソコン、スマートフォン向けテレビ「AbemaTV」が面白い。オススメしたいのが、火~日曜日の深夜1~3時放送の帯番組「The Night」。毎日異なったパーソナリティが話す、Abema版オールナイトニッポン。話題の人をいち早くブッキングする。
水曜日担当は矢口真里、ゲストはアイドルオンリー。
10月17日放送、ゲストで登場したのが元NMB48の須藤凜々花。アイドル界イチのトリックスターである。
現れた須藤を見て、矢口がまずツッコンだのはアイドルとは思えない若手ラッパーのようなルック。ダボダボのウィンドブレーカー、なかに着るのは「DAMN.」Tシャツ。須藤が総選挙で結婚宣言をした翌日にも着ていた代名詞的な一品だ。
ちなみに「DAMN.」の意味は「クソったれ」、彼女が愛するHipHop用語である。
アイドル然としたラブリーな見た目に相反する過激さ、それが須藤の魅力だ。当人からすれば「好きなものを好き」と言っているだけ。しかし、アイドルとなると普通のことも過激と捉えられる。
NMB48を卒業することになり、ミュージックステーションで須藤SPが組まれた。最後の挨拶をした彼女はこう叫ぶ「うぇいよー!」
ラッパーUZIの有名フレーズだが、知っているのは好事家オンリー。
HipHopへの愛は深い。ツイッターのアカウント名も須藤凜々花a.k.a.りりぽん。a.k.aとは「also known as」の略。日本語に訳すと「別名」、ラッパーネームにも頻繁に用意られる言葉である。
矢口は聞く「りりぽん、今後出たいAbemaの番組ないの?」
須藤は答える「漢たちとお散歩」
ここで語られる”漢”なる人物の正式名称は、漢a.k.aGAMI。新宿のアンダーグラウンドシーンから現れた強面のラッパーである。
「漢たちとお散歩」とは、そんな男が仲間を引き連れて、飲んで食って、即興ラップをする番組。大概のアイドルが好む番組ではないし、ましてアイドルファンが出演を望む番組でもない。
須藤は異端のアイドル、アイドル道へ入った理由も一味違う。
中学の授業を通して哲学に興味を持つ。
「哲学者になりたい。そのためには人間を見る目が必要。ならば、大量の人と握手できるアイドルは適格だ。しかも、大学へ行くための学費も稼げる」と高校2年生(17歳)の進路相談で気づく。
2013年に開催されたAKB48グループドラフト会議にて、最多の3チームからオファー。くじ引きの結果、NMB48のチームNのメンバーとなった。
「指名チームがドラフト参加者のなかで一番多かったので、松坂大輔みたい! と言われた」と話す。ここから彼女の快進撃がスタート。
19歳にはNMB48のシングル曲「ドリアン少年」でセンターを務め、趣味の麻雀を活かした冠番組「りりぽんのトップ目とったんで!」がスタートし、目標であった哲学書「人生を危険にさらせ」(幻冬舎)も上梓。
2年間のアイドル活動で、ここまでの成果を残した。
20歳、第9回AKB48選抜総選挙にて結婚宣言。アイドルを卒業し、今現在はタレントとして活動中だ。
側から見れば、暴走気味なアイドル活動。しかし「人生を危険にさらせ」を読めば、須藤の行動原理が理解できる。
前書きの「明るくポップに反社会的で、そして無邪気に反時代的なものであるかもしれない」という文章。本の説明として書かれたものだが、須藤の人格とも読める。