馬連を買っていれば「また2着3着かよ!?」、ワイドや3連複を買っていれば「惜しい4着!」。レース後のこんな悲哀は競馬ファンなら何度も味わっているところだ。数々の名馬を世に送り出した調教師・角居勝彦氏による週刊ポストでの連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」から、調教師としては何着であれば馬主に顔が立つのかについて打ち明ける。
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馬が勝った時、私たち陣営と応援してくれたファンの方々の歓喜はピタリと一致します。人気があろうとなかろうと、レースに出すからには、常に勝たせることを考えています。しかし現実問題として着順が下がるにつれ、両者に微妙な乖離が生まれることになる。
陣営が「3着なら、よく頑張った。強い相手が揃っていたし」などと自足するところでも、馬連を買っているファンからすれば「3着かよ~」となりますね。私たちは、ファンの期待に応えられなかった悔しさを見つめなければいけません。
この乖離が、最も大きくなるのが4着、5着ではないでしょうか。馬券的には「ハナ差の4着」というのは、何の役にも立ちません。馬券を買ったファンにとっては4着でも5着でもどうでもいいことです。
しかし馬を走らせた側には通常8着まで、重賞ともなれば10着まで賞金が出ます。たとえばGIで天皇賞(秋)ともなれば、4着でも2300万円。これは平場のオープン特別勝ちとほぼ同額、5着でも1500万円です。重賞の場合、収得賞金が加算されるのは2着までですが、4着以下でも着順を一つでも伸ばすことがいかに大事か分かります。
調教師として馬主さんに顔が立つのは掲示板に載る5着以内。未勝利戦でも5着に入れば、預託料1か月分の負担がほぼなくなります。